2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J11291
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹田 麻里 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 農業用水 / 転用 / 水価 / 双方独占モデル / 交渉 / 繰り返しゲーム / 農業用水合理化事業 / 埼玉県 |
Research Abstract |
本年度は,農業用水の転用水市場についての文献整理と事例研究による実証的研究の成果を整理・公表と転用水価の観点から今後研究が必要とされる問題について調査を行った. まず,実証的研究の成果の整理・公表についてであるが,埼玉県で行われた農業用水合理化事業に関する文献と聞取り調査により,少なくとも我が国における転用水市場は,制度的・経済的な意味で双方独占的な市場であることを明らかにした.また,同合理化事業での事業費負担配分を詳細に検討することによって,転用水価を推定した.転用水価の推定方法は,水利権を失う農業側に対して水利権を得る都市側が何らかの補償をする場合,その補償額を転用水利権水量で割るというものである.分析対象である農業用水合理化事業は,事業によって都市側・農業側双方が便益を得るため,共同事業として行われており,水価の推定は少し複雑になる.しかし,基本的には前述の方法を基礎にして,転用水価を推定した.すなわち,共同事業として農業側に割振られた事業費の地元負担分を都市側が肩代わり負担して転用を行った実態から,この肩代わり負担が転用に関する都市側の農業側に対する補償額であるとみなして転用水価を推定したのである.さらに,転用をめぐる交渉が,同一主体間で繰り返し行われた事実から,転用水価を規定する肩代わり負担の額が,水需給の逼迫の度合いや交渉が繰り返しゲーム的状況か,ワンショットゲーム的な状況下によって変化しうること,転用交渉の文書や転用本価の推定値から指摘した.今後は,ゲーム理論を方法論としてモデルを精緻化する必要があると考えられる. また,今後研究が必要とされるトピックとして,環境と農業の間の水資源の再配分が考えられる.そのため,農業用水および水利施設の環境用水的利用をめざす土地改良区への調査を行った.
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