2004 Fiscal Year Annual Research Report
シリコンベース量子構造におけるキャリアダイナミクスとデバイス機能化に関する研究
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04J11309
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安原 望 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | SiGe / 量子井戸 / キャリアダイナミクス |
Research Abstract |
本研究の対象としてSiGe/Si歪量子井戸を選び、電場下でのキャリアダイナミクスを調べた。SiGe/Si歪量子井戸は伝導帯のバンドオフセットが数meVととても小さく、このため、電子を外場によりダイナミックに制御することが可能となる。 1、本研究において、パルス光励起によるSiGe/Si歪単一量子井戸からの蛍光を、電場によりスイッチングすることを試みた。電子を一時的に溜める場所として、表面近傍を用いた。実験は5.6Kにおいて行った。表面側を正とする電場下において、光励起された電子は、表面側に引き寄せられ、電場を解除したとき、表面側から電子が量子井戸へ拡散する動的過程が、量子井戸からの蛍光により観測された。この実験により、4.5Vの電圧をサンプルに印加したとき、表面近傍に溜められた電子の寿命は182μsであることがわかった。また、10MHz以上の速さでスイッチングが可能であることを示した。 2、SiGe/Si歪二重量子井戸において光励起によりキャリアを生成したとき、二つの量子井戸内の電子分布を、電場により片側の井戸へと著しく偏らせることにより、発光させる井戸を選ぶことができる。本研究において、この原理をSiGe/Si歪三重量子井戸に適用した場合においても、発光させる井戸を選ぶことが可能であることを示した。電場による3輻射波長スイッチングに成功した。 3、SiGe/Si歪量子井戸の端面からの非フォノン発光は偏光しており、電場の向きは井戸面に平行であることが知られている。また、熱や電場により励起子が解離することで、伝導帯の電子軌道の対称性がΔ_4からΔ_6に移ることにより、この偏光は消失することが知られている。本研究において、電場下でSiGe/Si歪量子井戸の蛍光寿命測定を行うことで、電場による励起子の解離に伴い非フォノン発光の偏光が時間と共に解消されていく様子を初めて観測した。
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