Research Abstract |
火山噴火のタイプには,爆発的なものから非爆発的なものまで非常に幅広い多様性があり,その多様性が生じるメカニズムを明らかにすることは,噴火の推移の予知などにおいて重要である。本研究では,多様な噴火タイプを生む要因の一つである,火道内における気相・液相間の相対運動(液相マグマからガスが分離する過程,以下,脱ガス過程と呼ぶ)を考慮した一次元定常火道流モデルを用いて,噴火タイプの多様性が生じるメカニズムを調べた。 火道流モデルに対する数値解析の結果,爆発的噴火と非爆発的噴火に対応する火道流の定常解が存在し,マグマの性質や地質条件に依存して,存在し得る定常解の組み合わせが多様に変化することがわかった。本研究では,火道内の流れを支配する力学的バランスを解析的に明らかにした。それを用いることによって,気相・液相問の相対運動を考慮した火道流の問題は,与えられた境界条件のもとで,無次元数γとε,その他のマグマの性質・地質条件の関数として,無次元噴出率αを求める問題として定式化できることを明らかにした。ここでαは火道壁からの摩擦抵抗とマグマの荷重の効果の比を表し,γは(火道半径)2/(液相の粘性)の効果を表すパラメータ,εは縦方向への脱ガス過程が生じている領域における火道壁からの摩擦抵抗と気液間の相互作用力の効果の比として定義され,脱ガスの効果を表すパラメータである。γとεはマグマの性質・地質条件のみによって決定される。この定式化を用いることによって,多様な噴火タイプに対応する定常解を系統的に求めることができる火道流の解析的解法を導出した。 解析的解法をもとに,γ,ε,火道の長さからなるパラメータ空間において,定常解の組み合わせとマグマの性質・地質条件の関係を示すレジームマップを導出した。このレジームマップを用いることによって,ある特定の噴火タイプが生じ得るマグマの性質や地質条件を明らかにすることが可能となった。以上によって,観測事実との比較に耐えうる火道流の理論モデルを構築することができた。実際に本研究の解析結果と観測事実との比較を行ったところ,両者がよく一致する結果が得られた。
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