Research Abstract |
遷急区間の空間分布を把握するために,GIS(地理情報システム)を用いて,日本列島中部地域における地形データ(数値標高モデル,DEM)の分析を行った。河床勾配の定量的解析により,河床勾配は計測区間の設定方法によって異なる地形の特徴を表現することが示された。また,このような河床勾配の解析から,より局所的な地形特性に注目して遷急区間を定量的に抽出する方法を開発した。こういった遷急区間は,地殻変動が活発で湿潤気候の下にある日本列島の山地河川において多数存在することがわかった。遷急区間の形成要因や地形変化との関係については,その分布特性から検討中である。 また,遷急区間の後退速度について,いくつかの滝を事例として取り上げて調査,検討を行った。対象としたのは,本州中東部房総半島における堆積岩地域の滝,本州中部における雷滝,九州中部阿蘇山周辺における溶岩や溶結凝灰岩にかかる滝およびアメリカ合衆国コロラド州北部のPoudre Fallsである。房総半島の滝では,より多くのデータ収集を行い,Hayakawa and Matsukura(2003)による経験式について再検討し,その適用可能性が確認された(Hayakawa,2005,in press)。さらにこの経験式に基づき,その他の地域における滝の後退速度の評価を行った。その結果として,一般に滝の後退速度は他のプロセスによる侵食速度に比べ大きいことが確認され,気候変化や地殻変動に対する地形変化の第一次的な反応としての滝の後退の重要性が示唆された(たとえばHayakawa et al.,2004)。 一方,よりミクロスケールでの地理情報科学的研究の事例として,レーザースキャナによる礫の3次元モデルの構築とその形状の定量的把握について論じた(Hayakawa and Oguchi,2005,in press)。
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