Research Abstract |
悪性腫瘍の治療法の一つとして,HIFU(High Intensity Focused Ultrasound)があり,近年では臨床での応用例の報告もされている.しかし,脳腫瘍や肝腫瘍など,骨や脂肪層の存在により超音波の反射・屈折・減衰の影響が大きくなる部位については,患部に対する出力不足などが否めない.一方,マイクロバブルの医療分野への応用も注目されており,微小気泡に対して超音波を照射すると,気泡自身が超音波エネルギーを吸収し熱エネルギーに変換する働きをすることが知見として得られている.この発熱作用を生体内に適用することにより,低出力の超音波による治療が可能となり,侵襲性の低い治療を実現することができる.今年度は,「微小気泡の性質と発熱作用との関係」について,数値計算・in vitro実験・in vivo実験を行い解析を進めた. 数値計算においては,微小気泡の振動に伴い周囲に放出される熱エネルギーについて解析を行った.今年度は,気泡内部の気体の種類と気泡からの発熱量の関係について解析を進め,気泡内部気体の種類の違いにより,発熱量にも差異が生じることがわかった. In vitro実験では,様々な内部気体を持つ微小気泡を用いた実験を行った.内部気体として,それぞれ異なる比熱比を持つ,アルゴン・空気・六フッ化硫黄などを用いて実験を行ったところ,気泡内部の気体の種類を変えることにより,気泡からの発熱量を変えることが可能であることが示された. In vivo実験では,ラビットを用いて微小気泡による加熱作用の増強効果について検証した.肝臓に対して集束超音波を照射し,気泡注入によって患部での発熱作用が増強されることが確かめられた.また,気泡内部気体および気泡殻の物性の異なる微小気泡を用いて同様の超音波照射実験を行い,微小気泡の性質の違いに伴って加熱凝固効果に有意な差が生じることが確認された.
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