2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J11429
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
栗田 玲 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 液体・液体相転移 / 分子性液体 / 相転移ダイナミクス / 核形成・成長 / スピノ-ダル分解 / 2秩序変数モデル / 局所安定構造 / 臨界現象 |
Research Abstract |
単一原子または分子種からなる物質に2つの液体状態が存在し、その間で一次相転移が起きるという液体・液体相転移は、「液体=乱雑かつ一様な状態」という直感に反するため、その存在そのものが議論の対象になっていた。近年、原子性液体において液体・液体相転移の存在について示唆する結果が得られてきたが、その性質や起源について高温・高圧という実験の困難さから調べることが出来なかった。こうした中、Triphenyl Phosphiteという有機液体において分子性液体としては初めての液体・液体転移の確実な実験的証拠を見出した。この液体・液体相転移は常温・常圧下で起こるため、多種多様な実験を行うことが出来る。そこで、液体・液体相転移のパターン形成を調べたところ、クエンチ温度の違いによって核形成・成長型とスピノ-ダル分解型の2種類あることがわかった。 本年度は、スピノ-ダル分解型液体・液体相転移のキネティクスについて、位相差顕微鏡を用いて詳細に調べた。その結果、初期過程において揺らぎが指数関数的に増大する線形領域が存在すること、後期過程においてはドメインが時間の0.5乗で発展することがわかった。これらの結果は、液体・液体相転移を支配する秩序変数が非保存系であることを示唆している。また、線形領域における構造因子のピーク波数から液体の相関長を求あると、スピノ-ダル温度に向かって平均場近似的に発散することがわかった。これは液体・液体相転移の臨界点が存在することを意味し、密度以外の秩序変数があることを示唆している。さらに、熱量測定の結果から液体・液体相転移を支配している秩序変数として、液体中に存在する局所安定構造の数密度であることが示唆された。
|