2004 Fiscal Year Annual Research Report
数論多様体のコホモロジー論的研究とそのラングランズ対応への応用
Project/Area Number |
04J11453
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三枝 洋一 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 数理科学 / リジッドコホモロジー / 消滅サイクル |
Research Abstract |
数論多様体のコホモロジー論的研究の主要なテーマの1つに,局所体上の代数多様体の退化の研究がある.l進コホモロジーの場合は、消滅サイクル層(または隣接サイクル層)を用いて一般ファイバーと退化したファイバーのコホモロジーを比較することができ,それをもとにした様々な深い結果が存在する.ラングランズ対応への応用も盛んに行われている.今年度,私はこの消滅サイクルのリジッドコホモロジー類似について研究した.リジッドコホモロジーは代表的なp進コホモロジーであり,多くの大域的な応用において前述のl進コホモロジーを補うものである.私は,Berthelot, Baldassarriによる特殊化写像の構成を参考にして,局所体上滑らかな代数多様体の一般の退化に対して消滅サイクル加群の類似(これはl進の場合の消滅サイクル層のコホモロジーに相当する)を構成した.高々通常2重点を持つ退化の場合の消滅サイクル加群の構成は,半安定モデルとde Rham-Witt複体を利用することにより昨年度に既に得ていたものであるが,上述の結果はこれの改良にあたる.具体的には,高々通常2重点を持つという非常に特殊な状況に限らず消滅サイクル加群が構成できることと局所体の剰余体が完全であるという仮定を外せること,特殊化写像と消滅サイクル加群の定義体が下がることの3点が改良点である.今後,この消滅サイクル加群のD^t加群との関わりを明らかにし,様々な関手的性質を整備することで,代数多様体の退化のp進コホモロジー論的研究に新たな道が開け,志村多様体の悪い還元に応用することでラングランズ対応の研究へも貢献することができると期待している.
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