2004 Fiscal Year Annual Research Report
高品質T型量子細線の顕微発光スペクトルと一次元励起子状態の研究
Project/Area Number |
04J11459
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 弘毅 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子細線 / 一次元 / 励起子 / 発光励起スペクトル / GaAs / AlAs量子井戸 / 発光線幅 / MBE成長条件 / 数値計算 |
Research Abstract |
T型量子細線構造は量子井戸を垂直に交差させたものであり、それらの厚みが正味の細線の「太さ」となる。試料品質が研究のボトルネックであったが、近年開発された革新的試料作製技術により、GaAs系14nmx6nm細線の性質が次々と明らかになった。本研究のねらいは、細線中励起子、即ち一次元励起子の物理の探索にある。細線をより細く、周囲の障壁をより高くすれば、励起子の一次元的振舞がより顕著に発現すると考え、当該試料構造のデザイン及び作製、評価に取り組んだ。 具体的には5nmx5nmで、高いAlAs障壁を有する細線であるが、この構造での高品質化は難しい。そのため4種のMBE成長条件あるいは試料構造について、光学的な評価を混じえ試行錯誤を繰り返した。その結果良質なパラメータを見出して、高品質試料が得られた。発光線幅は10年前のものと比較し約一桁向上(狭い)し、励起子の一次元性を見る上で欠かせぬ構造を分離して観測することが可能となった。量子井戸構造にのみ着目しても発光線幅は我々の知る限り世界で一番細い。 この試料の発光・発光励起スペクトルを測定し、狙い通り一次元性の増大を確認した。だが吸収線幅の相違から6nmx14nmの結果と定量的比較には至っていない。この相違が偶発的なのか、或いは構造と不可分の本質的なものかはまだ判っていない。なお、強い直線偏光依存を持つ未知の状態も併せて観測された。これらの結果は日本物理学会第60回年次大会において発表した(24PS-103)。 光学測定の一方で、状態の帰属に不可欠な数値計算にも取り組んでいる。これは既存ライブラリを前提に構築された高度なものであり、現在は移植・拡張の作業中である。既存ライブラリベンダの提供の遅延に伴い本格運用には至っていないが、移植作業は順調に進んでいる。
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