2005 Fiscal Year Annual Research Report
高品質T型量子細線の顕微発光スペクトルと一次元励起子状態の研究
Project/Area Number |
04J11459
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 弘毅 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子細線 / 量子井戸 / 低次元系 / AIAs / GaAs / InGaAsP / 発光スペクトル / 発光線幅 / レーザー |
Research Abstract |
1.研究のねらい 本研究の目的は、量子細線構造を通じて低次元系の物理への理解を深めることにある。平成17年度においては、メインである「T型」と共に、エッチングにより作製された量子細線についての測定/評価も行った。 2.GaAsT型量子細線 GaAs系T型量子細線構造はMBEによる劈開再成長法で量子井戸を垂直に交差させたものであり、それらの厚みが正味の細線の「太さ」となる。一次元系物理における興味と、高品質レーザーデバイスの具現への期待から研究が進められていたが、試料作製技術がそれを妨げるボトルネックとなっていた。が、2000年に開発された革新的な試料作製技術により、基礎物性及びデバイス応用の両面にとっても研究は飛躍的な進歩をみた。この時主に調べられたのは14nm×6nmなるサイズの量子細線であったが、この細線を5nm×5nmとより細くし、障壁を(AIGaAsから)AIAsとより高いものにすれば、さらなる一次元性の増強と共に新奇物性の開拓も期待できると考え、この構造を持つ高品質な試料の作製・評価(主に光物性の観点から)に取り組んだ。 AIAs 5nm量子井戸構造という観点からは、作製された試料の品質は極めて優れたものであった。品質の尺度として発光線幅の細さが挙げられるが、これが1.0meVと知る限りでは世界で最も細いものであった。「副産物」ではあるのだが、これは量子井戸の物理単独として見ても重要な成果である。これを受け、かかる極めて理想的な二次元系の理解も深めるべく、絶対光量/発光効率測定に現在取り組んでいる。一方で量子細線構造という観点からは、従来の14nm×6nmの品質を越えるものではなく、各種分光測定を行ったものの、定まった知見は得られていない。これはより酸化されやすいAIAs層が悪影響を及ぼしていると考えられるので、その酸化の影響を抑える様な構造の設計と作製を現在行っている。 3.InGaAsPエッチング細線 こちらの量子細線は前述のT型とは違い、MOCVD成長による量子井戸を、エッチングによって「切り出し」た細線である。形状の自由度が大きく、室温で安定したレーザー動作が既に実現されているが、低温における基礎的な光物性の評価は成されていなかったために、これに取り組んだ。空間分解顕微発光測定の結果、細線構造は、光導波路全体に渡り非常に一様であること、光励起強度を変化させた際の発光スペクトルの変化が既存の細線と同様であること、そして発光には変更依存性が存在すること、などが評価の結果わかった。現在は、細線の物理をより浮かび上がらせるために、単一の細線のみを持つ試料についての発光スペクトル測定を行っている。
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