2006 Fiscal Year Annual Research Report
走査トンネル顕微鏡と赤外反射吸収分光によるステップ表面での分子の過渡的拡散の研究
Project/Area Number |
04J11464
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塚原 規志 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 白金表面 / 吸着 / 拡散 / ステップ / 赤外反射吸収分光 / モンテカルロシミュレーション / STM |
Research Abstract |
平成18年度は、主に前年までのPt(997)表面でのNO分子の拡散の結果をより詳細に評価するため、解析に動的モンテカルロ法に基づくシミュレーションを行った。NO分子は、気相から表面に衝突後、約4.1Å過渡的に拡散する。これはCOの6.8Åよりもさらに短く、基盤へのエネルギー散逸がより効率的に行われている事や、より複雑なポテンシャルエネルギー表面の形状が関連していると考えられる。基板温度が40Kを超えると、ステップ直下の吸着種がステップを登って上段のブリッジサイトに移動する。ステップ上段のブリッジサイトはNO分子に対する再安定の吸着サイトであるが、そこまでのアプローチが上段テラスあるいは下段テラスからも可能という、興味深い結果が得られた。上段・下段からのアプローチの差は、Schwoebel効果として知られているが、NO分子はこの効果があまり重要でないことを見出した。ミクロな観点から、分子のSchwoebel効果に対する実験的な観測はこれまでになく、分子の表面拡散に対する新たな知見が得られた。また、テラス上ではオントップ吸着種が最近接のホローまたはステップサイトにホッピングし、その活性化エネルギー200meV、前指数因子2.0×10^<11>s^<-1>を見積もった。さらにテラスのホロー吸着種は、ブリッジサイトを経由し、隣のホローへ移動する。そのときの活性化エネルギーは290meV、前指数因子は6.5×10^<11>s^<-1>である。これらの結果と、共同研究のDFT計算の結果から、NO分子に対するPt(997)表面でのポテンシャルエネルギー表面の形状や、気相から入射したNO分子の拡散の様子を見積もることができた。 また、それと同時にSTMの方も実験を並行して行い、低温での安定な測定が可能になった。また、上述の動的モンテカルロシミュレーションにローカルなSTMからの情報を取り入れられれば、(たとえば上述のステップを登るプロセスの速度定数など)より詳細なシミュレーションが行える。
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