2004 Fiscal Year Annual Research Report
神経振動場と身体性に基づく情動・知覚・行動の相互創発に関する研究
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04J11492
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
米倉 将吾 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 情動 / バーストニューロン / 身体性 / 神経-筋骨格モデル / 力学系 / ニューロモジュレーション / 神経振動場 |
Research Abstract |
従来のロボットによる情動研究では情動をシンボル化し、中身をブラックボックスとして扱っていた。しかしながら、原始的な神経回路しか持たない昆虫ですら、環境の有害性・無害性を知覚し多種多様な適応行動を起こす。本研究では、情動は快・不快などのシンボルではなく身体・環境・神経の振動場の相互作用における物理現象であると捉え、情動・知覚・行動は不可分・相互作用的に創発・発達し、観察者によってその物理現象がシンボル化されるという発想のもと情動ロボットの構築を試みている。 本年度はまず、非常に単純な移動ロボットを用いて、闘争-逃走のように状況に応じて相反する2つの刺激応答パターンが生成される過程を、(1)神経振動場-神経修飾物質、(2)身体-環境、の2つの関係性に着目して再現し、その刺激応答パターンの転移のメカニズムを説明し、発表した。 さらに、神経振動場を用いたロボットの一般的な動作生成方法を構築してゆくために、筋繊維を用いて動作する多自由度ロボットをシミュレーション上で構築し、実験した。この過程で、msecオーダーで活動する神経振動場の出力が身体-環境の有するダイナミクスの複雑さによって100msec〜secオーダーのロボットの振る舞いに統合されうる可能性が示された。このシミュレーションを基に、人工筋肉を持ち神経振動場で動作する実機の構築準備に取り掛かっている。 また、シミュレーションにおいて、多自由度ロボットが情動的に振舞う条件を探る過程で、恐怖に類したすくみ様の応答が、身体から神経へのフィードバックの存在により長期化される事を見出した。さらに、ロボットを用いて恐怖を論じる場合に、神経系・身体ともに不動を表象していては恐怖と安息などを区別する事が出来ないことから、神経系による動作の表象と、その表象に反した身体の反射的な不動化の相互作用が必要になる可能性を示唆した。 本研究により、はじめから設計者によりロボットに「恐怖」という情動を埋め込むのではなく、恐怖という情動の属性が振る舞いに付与される、という新たな研究例が示された。
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Research Products
(3 results)