2005 Fiscal Year Annual Research Report
神経振動場と身体性に基づく情動・知覚・行動の相互創発に関する研究
Project/Area Number |
04J11492
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
米倉 将吾 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 情動 / バーストニューロン / 創発 / 闘争か逃走 / 抑圧 |
Research Abstract |
従来のロボットによる情動研究では情動をシンボル化し、中身をブラックボックスとして扱っていた。これに対し本研究では、情動は環境-身体-神経振動場の相互作用によって知覚・行動と不可分な形で創発されるという作業仮説のもと、情動の本質レベルにおけるモデルを模索してきた。 前年度までにおいて、闘争-逃走といった、相反する2つの刺激応答パターンが神経振動場と神経修飾物質を用いて構成可能であること。多自由度ロボットにおいて、すくみ応答を環境・身体・神経振動場の相互作用のうちに創発可能であること。恐怖という情動が創発されるためにはエージェント内に行為への意思が存在し、かつ、その行為が抑圧を受ける必要性がある事、などを示してきた。 本年度ではまず、多自由度ロボットにおいて創発された「すくみ」応答時における環境・身体・神経のダイナミクスの解析から着手し、(a)すくみ応答が身体からのフィードバックにより長期化すること、(b)すくみ時には神経活動の多様性が消失し周期活動になる事を確認した。さらに、「行為への意思とその抑圧により生まれる相剋」という概念により嫌悪・笑い、なども同様に議論が可能である事を論じ、発表した。 さらに、喜怒哀楽など全ての情動を工学的に体系的に扱うための基本原理を求め、「行為への意思とその抑圧」いう論点を一般化し、「情動とは、実世界のうちに必然的に生まれうる『予測モデルの破綻』・『動機の抑圧』などにより生まれる『相剋』を解消するために要求され、創発的に組織化された合目的的行為である」とする、情動を工学的・体系的に扱う際の基本原理となりうる情動の定義を導き、発表した。 また、恐れ、怒り、喜び、などの情動行為を表現豊かに表出するエージェントを上述した基本原理を基に統一的に実装してゆくため、3Dキャラクタ作成支援ソフトと高速な計算機環境を導入し、新たな実験環境としてAgeia社のPhysX物理エンジンを用いてシミュレーション環境の開発を進めた。 なお、平成17年度研究計画申請書に記載していた(1)快・不快の源泉器官として適切な器官の選択とロボットへの実装と、(3)快・不快などの情動表出機構の実装は来年度の課題として残された。
|
Research Products
(2 results)