2006 Fiscal Year Annual Research Report
ディスク状多座配位子を用いた金属イオンの三次元集積化および機能性金属錯体の構築
Project/Area Number |
04J11506
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原野 幸治 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 金属錯体 / 分子認識 / 自己集合 / 超分子化学 |
Research Abstract |
前年度までに、3-ピリジル基を有するディスク状三座配位子(L)と10種類の二価金属イオンから直径約3.5nmのカプセル錯体が定量的に自己集合することを明らかにしている。カプセル錯体の対アニオンはカプセル内外に同数分布しているが、より配位能の強いアニオンを添加することにより、カプセル内部の対アニオンを定量的かっ選択的に置換できることを今回新たに見いだした。特に、ピリジル基やフェロセニル基など、分子認識能や酸化還元能を有するアニオンを用いた場合においても選択的に置換されることを利用し、カプセル内面を機能性官能基により簡便に修飾できる。今後、カプセル錯体の機能化された内部空間を特異的分子認識場や物質変換場として活用できると期待される。 また、本研究においてこれまで見いだされた種々の自己集合型ナノカプセル錯体におけるカプセル内外の分子・イオンの交換速度を、EXSY NMRや線型解析をはじめとする動的NMRの手法を用いて解析した。その結果、カプセル錯体内外の分子交換速度はナノカプセルの三次元構造や金属イオンの種類、または溶媒によって大きく変化することが示唆された。特に、上述の人面体型カプセル錯体においては、対アニオンは配位子が完全に解離せずとも交換可能であることが明らかとなった。これらの知見は、カプセル分子による分子認識の選択性発現や内部空間を利用した反応設計に向けた重要な指針となる。 これらの金属錯体型ナノカプセルに加えて、前年度までに見いだされた、配位子L単独で形成する自己会合型六量体ナノカプセルについてもその機能性を検討した。Lは元来蛍光性の分子であるが、カプセル形成によりその蛍光強度が著しく増大することが明らかとなった。また、この六量体カプセルは酸の添加により速やかに単量体へと解離することを利用し、酸・塩基によりゲスト分子の可逆的な包接・放出をコントロール可能な動的分子認識系の構築に成功した。
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