2004 Fiscal Year Annual Research Report
半導体ナノ粒子の周辺環境依存性の制御による生体センサーの開発
Project/Area Number |
04J11525
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高本 篤史 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ナノ粒子 / 蛍光 / 非線形振動 / 吸着 / 凝集 / 量子ドット / 半導体 / コロイド |
Research Abstract |
CdSe/ZnSコアシェルナノ粒子(QD)の分散液の蛍光は、連続的励起光照射で時間振動する。以前までの研究では、水溶性分子が配位したQD水溶液のみで蛍光振動は観察されていた。しかしながら、疎水性の配位子(tri-n-octylphosphine oxide: TOPO)のQD分散液でも蛍光振動が同様に観察された。無極性溶媒では、水溶液系で懸念されていた塩濃度やpHの影響を排除でき、現象の解明が容易になると考えられる。 QDのトルエン分散液の蛍光は、暗所下でも徐々に強度が減少し、低エネルギー側へのシフトが観察された(レッドシフト)。レッドシフトは粒子が近接した際に起こるForster Energy Transferによると考えられ、QDの凝集が示唆された。つまり、QD分散液作製直後は、QDが過度に分散されている非平衡状態であると考えられる。また、蛍光のレッドシフト量と動的光散乱によるQDの凝集体の大きさの定量的な相関を確認し、レッドシフト量でのQDの分散性の推算を可能とした。蛍光レッドシフト量および蛍光振動強度の時間変化は、ほぼ同じ時定数で推移していった。一般に、非線形振動は系の非平衡度が大きい状態で観察されるものであるので、この結果から蛍光振動はQDの過分散という非平衡状態を駆動力とする現象であると考えられる。 TOPOは、立体反発によりQDの凝集を抑制する効果がある。一方、QD表面の欠陥準位をルイス塩基であるTOPOがパシベートすることで発光量子効率が増加することも知られている。以上の既往の研究と今回の研究結果から、蛍光振動はQDの凝集過程におけるTOPOのQDへの吸着脱離ダイナミクスによる現象であると考察している。今後はこの仮説を分析化学的手法により確認することと、現象の数理モデル化によるさらなる解明が求められる。
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Research Products
(2 results)