2006 Fiscal Year Annual Research Report
半導体ナノ粒子の周辺環境依存性の制御による生体センサーの開発
Project/Area Number |
04J11525
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高本 篤史 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ナノ粒子 / 半導体 / センサー / 表面化学 / 非線形振動 / 自己組織化 / コロイド / 蛍光 |
Research Abstract |
近年、粒径制御により蛍光波長を制御できる量子サイズ効果などの優れた光学特性から半導体ナノ粒子(QD)が注目され、盛んに研究されている。その応用例として、生体内マーカー、発光ダイオードなどが考えられている。一方で、励起光連続照射下でQD分散液の蛍光強度が時間振動することを見出した。蛍光振動は温度や塩などの不純物に対して非常に敏感であるために、蛍光振動のパターン変化を利用したセンサーへの応用も期待される。時系列データ(振動パターン)に基づいたセンサーは非線形応答型センサーと呼ばれ、生体では一般的である。非線形応答型センサーでは時系列の豊富な情報量を有しているので、従来の線形応答型センサーには不可能な多種目同時測定や高感度化が期待できる。そこで、センサーへの応用を最終的な目標としている。 QDにはCdSe/ZnSコアシェル型ナノ粒子(粒径4.3nm)を実験に用いている。このQDはtri-n-octylphosphineoxide(TOPO)という分子がQD表面に吸着してQD間を立体反発させることでQDを分散安定化させている。本年度は、TOPOの光脱離による分散不安定化(光凝集)が一部の粒子のみが凝集するマルチモーダルな粒径分布を形成するという興味深い現象を確認し、その凝集過程が蛍光振動現象の主たる原因であることを明らかにした。QDの凝集による励起光の散乱強度とQDの蛍光強度の時間変化が、ほぼ完全に同期していることを確認した。また、形成される凝集体サイズを考慮することにより、蛍光振動のメカニズムが「凝集体の励起光散乱を介した自己触媒的かっ協調的凝集」と「成長した凝集体の励起光非照射部への沈降」の競合過程であるという仮説を立て、その傍証となる実験結果を得た。今後、周辺環境に敏感な蛍光振動現象のコントロールを行うことによって、センサーへの応用が期待できると考えられる。 本研究の過程で得られた結果であるQDの光凝集を、QDの基板へのパターニング技術への応用検討も行った。基板とQDのサスペンション接地界面に集光したレーザー光を照射することにより、光の分解能程度のQDの構造体を基板上に作製することに成功した(光集積)。QDは表面に抗体を結合させることで、抗原抗体反応のセンシング材料として検討されている。今回の技術によって、きわめて微細な領域に多様な抗体を有するQDをパターン化することができると考えられる。そのため、光集積技術によって膨大な項目の抗原を同時に感知することができる微小センサーの開発へつながると考えられる。
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Research Products
(1 results)