2005 Fiscal Year Annual Research Report
形態形成過程の全容解明に向けた、転写因子下流遺伝子の網羅的探索
Project/Area Number |
04J11585
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田尻 怜子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 形態形成 / 区画化 / trachealess / 肢形成過程 / bHLH-PAS / Bar / 転写因子 / 発現制御 |
Research Abstract |
形態形成の初期過程ではモルフォゲンの活性勾配が複数の転写因子の領域特異的発現を誘導し組織をおおよその区画に分割するが、区画の境界を正確に決定し保持するためにはこれらの転写因子間の相互の発現制御が重要である。また、それらの転写因子の下流で形態を直接制御する遺伝子の探索・解析の報告は少ない。本研究ではショウジョウバエ肢形成過程をモデル系とし、これらの後期過程に注目した解析を行っている。 成虫肢の前駆器官である肢原基はいくつかの転写因子の領域特異的発現により成虫肢の分節構造に対応する遠近軸方向の区画に分割される。それらの転写因子をコードする遺伝子のうち、ホメオボックス遺伝子al及びcllは先付節の予定領域で、Barは隣接する第5及び第4付節の予定領域で特異的に発現し、各領域の性質を決定する。これらの遺伝子の発現領域は、初めに遠近軸に沿ったEGF受容体シグナルの活性の勾配によりおおまかに決められた後、al及びcllによる先付節でのBarの発現の抑制や第5付節におけるBarの自己誘導などにより厳密に決定される。 前年度に報告したマイクロアレイ解析により、肢原基において分節特異的に発現する74遺伝子を見出した。今年度はこのうち特に先付節と第5付節にまたがるという興味深い発現を示したtrachealess(trh)遺伝子に注目してその機能解析を進めた。trhはbHLH-PAS型転写因子をコードし胚発生時に気管の形成に中心的な役割を果たすことが知られている。変異体やRNAi、強制発現系などを用いた解析の結果、trhは、先付節ではBarの発現の抑制に必要であるが、対照的に第5付節におけるBarの自己誘導に対しては協調的に働いていることが分かった。このようにBarの発現に対して先付節では負に、逆に第5付節では正に作用することにより、trhはこれらの領域の正確な区画化に寄与していると考えられる。
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