2004 Fiscal Year Annual Research Report
形態形成過程の全容解明に向けた、転写因子下流遺伝子の網羅的探索
Project/Area Number |
04J11585
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田尻 怜子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 形態形成 / マイクロアレイ / 転写因子 / Defferential Display / 区画化 / 肢形成過程 / 分節特異的発現 / 体節 |
Research Abstract |
均一な細胞集団がモルフォゲンの活性勾配に従った転写因子の領域特異的な発現によって区画化されるという形態形成の初期過程の一般的な機構が近年の研究で明らかにされてきたが、それらの転写因子の下流で形態を直接制御する遺伝子の探索・解析の報告は少ない。本研究ではショウジョウバエ肢形成過程をモデル系としてそれら下流遺伝子の網羅的解析を目指している。 ショウジョウバエの肢原基は、BarH1/2,Aristaless, Cllなど様々な転写因子の領域特異的発現により、成虫肢の遠近軸方向の分節構造に対応した区画に分割される。即ちこれらの転写因子による発現制御を受ける遺伝子もまた分節特異的に発現すると考えられる。そのような遺伝子を網羅的に探索するために、分節構造が形態的に明確になる蛹期の肢原基を分節ごとに切り分けて各分節からRNAを抽出し、マイクロアレイを用いて相互にDifferential displayを行った。本解析には現在入手可能な全ESTクローン約1万個(全遺伝子数の約7割)を載せたマイクロアレイを作製し用いた。また、体節ごとの発現量のばらつきによる誤差の排除や体節によって異なる発現パターンを持つ遺伝子の同定を視野に入れ、異なる体節の肢を区別し各々について実験を繰り返した。この解析の結果、900強の遺伝子が分節間で有意な発現量の差を示した。その中には分節特異的に発現することが既に知られている前述のBarH1/2,aristaless, cll等も含まれる。肢における機能が未知である遺伝子のうち98個についてin situハイブリダイゼーションにより実際の発現パターンを調べたところ、74遺伝子について分節特異的に発現していることが確認できた。またこのうちマイクロアレイ解析において一部の体節でのみ大きな発現量比を示した遺伝子は実際にその体節でのみ分節特異的に発現することも確かめられた。
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