2004 Fiscal Year Annual Research Report
鱗翅目昆虫とバキュロウイルス間の遺伝子水平移動とその生物学的意義の解明
Project/Area Number |
04J11613
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大門 高明 東京大学, 大学院・農学生物科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | カイコ / バキュロウイルス / キチナーゼ / horizontal gene transfer / 遺伝子水平移動 |
Research Abstract |
鱗翅目昆虫のモデル生物であるカイコの全ゲノム配列が明らかになった。このカイコ全ゲノム情報や鱗翅目昆虫のトランスクリプトームデータベースを利用して、バキュロウイルスと鱗翅目昆虫の間に保存されたORFを探索したところ、数十のORFが保存されていることが明らかになった。系統解析の結果、その中の複数個のORFは、宿主昆虫からのgene captureによってウイルスゲノムに水平転移した可能性が示唆された。本年度は、この水平転移産物の候補遺伝子の1つであるキチナーゼ遺伝子について、主に機能解析と比較解析を行った。 バキュロウイルスのキチナーゼ遺伝子(v-chiA)のカイコホモログBmChi-h遺伝子の機能解析を行ったところ、BmChi-hはエキソ型のキチナーゼをコードしており、脱皮期に限定して発現し、脱皮の際に分解される外骨格の部位に局在することが明らかになった。この発現パターンは昆虫に普遍的に存在するエンド型キチナーゼと同一のものであり、両者はおそらく協奏的に外骨格のキチン分解を行っているものと考えられた。 バキュロウイルスがコードするキチナーゼは、死亡宿主の液状化のために利用されている。BmChi-hとv-chiAとの比較解析の結果、細胞内局在・アルカリ適応・プロテアーゼの活性化というv-chiAで観察される性質は、v-chiAに固有のものであることが明らかになった。この事実は、バキュロウイルスは宿主の液状化という生物学的機能を果たすために、キチナーゼ遺伝子を獲得した後に、大規模にv-chiAの性質を改変してきたことを示唆する。
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