2004 Fiscal Year Annual Research Report
根圏・根組織からみた植物細胞のアルミニウム障害応答機構の解明
Project/Area Number |
04J11617
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
林 芳武 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イネ / 根端 / 回旋運動 / Al / pH / Ca |
Research Abstract |
植物は一度根をおろした環境からは移動できないため、環境条件の変化を大きく受ける。そのため、植物の生育環境を様々に変え、それに対する植物の反応を観察・解析することは、植物と環境との相互作用を理解するための第一歩である。自然界における植物の生育環境において、光量不足により今まで詳細な観察が困難だった環境の代表として「地下」と「夜間」があげられる。これらの条件下での植物の生育様式を理解するためには、植物体に影響を与えないレベルの微弱光下での観察が望ましい。今回はNHK技研の開発した超高感度撮像デバイスであるSuper-HARPカメラを用いて観察を行った。これまでの実験で、暗条件下(光量0.03lux)でのイネ種子根の画像が鮮明に捉えられること、またAlイオンの存在下では回旋運動が阻害を受け、その阻害の程度はAlイオン濃度に比例して深刻なものになることが明らかとなっている。そのため、今年度は植物の根のAl障害に大きく関与するpHおよびCa濃度の条件を変えて、その影響の観察を行った。 「pH変化の影響観察」水耕液、そして植物細胞中のイオンバランスもpHの値に大きく左右される。種々のイオンを加えてその影響を見る前に、pHそのものの影響を確認しておく必要があった。イネ幼生の生育のための至適pHは4.5〜5.0であるとされているので、pH4.5を中心に0.5ずつ上下させてその影響を観察した。 「Ca濃度変化の影響観察」Alは植物の根に障害を引き起こすことが広く知られている元素である。では植物の根の正常な伸長に欠かせないCaの濃度変化は根端回旋運動にどのような影響を与えるだろうか。Caの欠乏は根の伸長を阻害するため、今回の実験では高濃度のCa処理のみを行い、その影響を観察した。サンプルの処理、観察条件等は昨年度の実験と同じ条件設定を用いた。 今回イネ根端の回旋運動の評価に使用した回旋角度と回旋周期の2つのパラメータについて、pHの変化は後者のみ、Ca濃度の変化は前者のみに影響を与えた、という興味深い結果が得られた。昨年度の実験から得られた「Al処理によって回旋運動が阻害される」という実験結果も、実際に阻害を受けたのは回旋角度のみで回旋周期の方にはAl処理の前後で大きな変化は見られていない。ここからは、植物の生長に対する影響とは関わりなく、金属イオンのバランスの変化がイネ根端の回旋運動に影響をおよぼしている可能性が示唆されるが、そう結論付けるためにはさらに数多くの実験を行う必要があるだろう。
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