2005 Fiscal Year Annual Research Report
根圏・根組織からみた植物細胞のアルミニウム障害応答機構の解明
Project/Area Number |
04J11617
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
林 芳武 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イネ / 根 / 環境応答 / アルミニウム / 回旋運動 / 細胞伸長 / 偏差生長 / 周期性 |
Research Abstract |
昨年度はアルミニウムによってイネ根端の回旋運動が一時的に影響を受けることを明らかにした。それを受け、17年度は様々な環境条件の変化が回旋運動に与える影響を調査した。根の生育に大きな影響を与え得る環境条件として光、およびpHを選択、それぞれの環境条件の変化が回旋周期に与える影響を測定した。またその際、根伸長速度についても測定した。その結果得られた回旋周期を個々のサンプルの根伸長速度で規格化、すなわち根が1mm伸びる間に根端は何回転するかの値に変換すると、光およびpHの変化は回旋運動の周期にはほとんど影響を与えないことが明らかとなった。 植物の根は、静止中心で生じた細胞の成熟過程に応じて大きく3つの部位-分裂域、伸長域、成熟域-に分けられる。イネ根端の回旋運動は根端から1〜1.5cmの部分が中心であり、この部分は表皮細胞のサイズの変化から考えて伸長域の入口にあたると考えられた。そこで、回旋運動を生み出すのは根組織における偏差成長であるとの仮定のもと、その偏差成長を生み出す要素が何であるか((1)主に細胞数の変化←細胞分裂の偏り、(2)主に細胞サイズの変化←細胞伸長の偏り、(3)細胞数および細胞サイズ両方の変化)を、イネ根端の組織切片を観察するなどして明らかにすることを試みた。顕微鏡観察により、偏差成長の結果として表れる屈曲の部位の凸側と凹側を構成する細胞の数およびサイズについても調べた結果、細胞数は外側と内側とでほぼ等しいか、あるいは内側のほうが一割ほど多いという結果となった。 ここでの細胞数の偏りが回旋運動に影響を与えているか否か、また与えているとしてその引き金、あるいは媒介となる伝達物質が存在するのか、また細胞サイズと細胞数とは根端の回旋運動において相互にどのような影響をおよぼしあっているのか。これらの疑問点についても今後は研究対象としていきたい。
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