2004 Fiscal Year Annual Research Report
クロロフィルa蛍光の高速動画像計測システムの開発と光合成電子伝達反応の診断
Project/Area Number |
04J11632
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小西 充洋 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | クロロフィル蛍光 / 画像計測 / 光合成電子伝達 / 分光 / クロロフィル濃度 |
Research Abstract |
クロロフィルa蛍光は,光合成生物から発せられる自家蛍光であり,光合成反応の状態を反映した強度変化を示すことが知られている。クロロフィル蛍光画像計測では,計測面において不均一な光合成活性の分布や障害の移行を調べることができる。本研究では,高速高感度カメラを用いることで,光合成電子伝達の初期反応を診断できるシステムを構築し,さらに,植物のクロロフィル濃度によらない計測手法の開発を行った。 まず,高速高感度カメラを用いたクロロフィル蛍光画像計測システムの開発を行った。このシステムを用い,根から電子伝達阻害剤DCMUを吸収させたキュウリ葉を計測対象とし,光照射後の多層のクロロフィル蛍光強度変化であるO-J-I-P過程の画像解析を行った。その結果,葉脈周辺部では,O-J-I過程にクロロフィル蛍光強度の上昇が見られた(J<I=P)。従来のクロロフィル蛍光画像計測システムでは計測できないO-J過程を解析に加えることで,より詳細な光合成電子伝達反応の診断が可能となった。 次に,クロロフィル濃度によらない計測手法の開発のため,飽和パルス法を用いた分光画像計測によるオゾン曝露されたヒマワリ葉の診断を行った。オゾン暴露後に葉面に可視害(ブリーチング)が認められたが,赤色蛍光画像(680nm)では可視害と対応しない光合成機能障害が確認され,遠赤色蛍光画像(740nm)では可視害に対応した不均一な蛍光パラメータの変化と不可視の光合成機能障害の両方が確認された。これは,赤色蛍光と遠赤色蛍光の再吸収率の違いによると考えられた。このことは,赤色および遠赤色蛍光計測結果の比較により,クロロフィル濃度が葉面に不均一な分布をしている場合でも,植物葉の光合成電子伝達に関する情報を抽出し,診断することができることを示唆していた。
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