2004 Fiscal Year Annual Research Report
小胞内伝達物質量依存的シナプス伝達効率調節機構の研究
Project/Area Number |
04J11698
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 貴之 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | グルタミン酸トランスポーター / AMPA受容体 / calyx of Held / シナプス小胞 / エンドサイトーシス / ダイナミン |
Research Abstract |
1.グリア型グルタミン酸トランスポーターであるGLT-1およびGLASTを遺伝的に欠損したマウスにおいて小胞内伝達物質量に野生型との相違があるか否かを、calyx of Heldシナプスを材料として電気生理学的な検討を行った。しかし、いずれの欠損動物に関しても野生型との有意な差を見出すことはできなかった。 2.幼若calyx of Heldシナプスにおいて、後シナプスAMPA受容体は単一小胞内伝達物質放出により飽和しないが、複数小胞の同時放出により飽和に至ることを見出した。この成果は現在投稿準備中である。 3.1および2の研究と並行して、シナプス小胞エンドサイトーシスの分子機構に関する研究を行い、サイエンス誌に論文を掲載することができた。以下に内容を記す。 神経終末端におけるシナプス小胞のエンドサイトーシスはシナプス伝達の維持に不可欠であるが、その分子メカニズムには不明な点が多く残されている。そこで、脳幹巨大神経終末であるcalyx of Heldの膜容量を測定することにより、シナプス小胞のエンドサイトーシスの分子メカニズムを調べた。伝達物質放出に関わる膜容量変化のみを解析すると、小胞エンドサイトーシスに伴う膜容量変化速度の時定数は10〜25秒であり、放出量が増大するにつれ遅くなることが明らかになった。また、加水分解を受けないGTPアナログGTP_γS、またはGTP分解酵素ダイナミン1のプロリン・リッチ・ドメインに相当するペプチドを神経終末端内に投与してダイナミン1の作用を阻止すると、エンドサイトーシスが停止した。これらは開口放出に対する即時的な効果を持たなかったが、開口放出を繰り返すと開口回数に依存して放出量を減少させる効果を示した。したがって、神経終末端において、ダイナミン1によるGTPの加水分解が小胞のエンドサイトーシスとそれによるシナプス伝達の維持に必要不可欠であると結論された。
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