2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J11720
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 望 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 上皮細胞 / 高度不飽和脂肪酸 / PAF-AH(II) / C.elgans / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)に代表される、高度不飽和脂肪酸は、学習能向上作用、制癌作用、抗炎症作用など生体に対する様々な生理活性が報告されており、近年その重要性に注目が集まっている。当研究室ではこれまでにPAF-AH(II)という新規脂質代謝酵素を同定しており、線虫(C.elegans)のPAF-AH(II)の解析から、PAF-AH(II)は胚発生期の上皮細胞に発現しており、欠損変異体は、上皮組織形成の異常により胚生致死となることを見出している。また、PAF-AH(II)をRNAi法により発現抑制した線虫では、高度不飽和脂肪酸を含むリン脂質が減少しており、試験管内の反応においても、PAF-AH(II)が高度不飽和脂肪酸を含むリン脂質を基質とすることが明らかになっている。このことから、PAF-AH(II)は高度不飽和脂肪酸を含むリン脂質の代謝を制御し、上皮組織形成に重要な機能を担っていることが示唆されている。今回、哺乳動物におけるPAF-AH(II)の発現を、マウスを用いて検討した。その結果、PAF-AH(II)は肝臓、腎臓、腸管など上皮細胞の多い臓器に高発現しており、免疫組織染色により、上皮細胞に発現していることが明らかとなった。このことから、PAF-AH(II)は哺乳動物においても上皮細胞で機能していることが示唆された。また、哺乳動物における解析の強力なツールとして、PAF-AH(II)ノックアウトマウスの作出に成功した。PAF-AH(II)ノックアウトマウスは胚生致死とならずに生まれきており、今後、ノックアウトマウスを用いた表現型や脂質変動の解析から、上皮細胞における高度不飽和脂肪酸の機能を解明し、医薬品開発の新たな標的を見つけていくことを目標としている。
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