2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J11720
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 望 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 上皮細胞 / 高度不飽和脂肪酸 / PAF-AH(II) / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)に代表される、高度不飽和脂肪酸は、学習能向上作用、制癌作用、抗炎症作用など生体に対する様々な生理活性が報告されており、近年その重要性に注目が集まっている。当研究室ではこれまでにPAF-AH(II)という新規脂質代謝酵素を同定しており、線虫(C.elegans)を用いた解析から、PAF-AH(II)は胚発生期の上皮細胞に発現しており、欠損変異体は、上皮組織形成異常により胚生致死となることを見出している。また、試験管内の反応において、PAF-AH(II)が高度不飽和脂肪酸を持つリン脂質を基質とすることを明らかにしており、高度不飽和脂肪酸合成酵素の変異体を用いた遺伝学的解析からも、PAF-AH(II)と高度不飽和脂肪酸合成経路の関係性が示されている。これらのことから、PAF-AH(II)は高度不飽和脂肪酸を持つリン脂質の代謝を制御し、上皮組織形成に重要な機能を担っていることが予想される。 今回、哺乳動物におけるPAF-AH(II)の機能解明を目的として、PAF-AH(II)欠損マウスの解析をおこなった。PAF-AH(II)欠損マウスはメンデルの法則に従って生まれ、外見上目立った異常は示さなかった。そこで、二次元電気泳動法により、PAF-AH(II)欠損マウスのタンパク質を網羅的に比較・解析した結果、GRP75の等電点変化を見いだした。GPR75はheat shock protein familyに属するストレス応答性の遺伝子である。次に、様々な疾患モデルを検討した結果、LPS投与により、PAF-AH(II)欠損マウスでは腎障害、肝障害が憎悪することが分かった。今後、PAF-AH(II)欠損マウスを用いた疾患モデルの解析から、上皮細胞における高度不飽和脂肪酸の機能を解明し、医薬品開発の新たな標的を見つけていくことを目標としている。
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