2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J11720
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 望 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 上皮細胞 / 高度不飽和脂肪酸 / PAF-AH(II) / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
高度不飽和脂肪酸は、学習能向上作用、制癌作用、抗炎症作用など生体に対する様々な生理活性が報告されており、近年その重要性に注目が集まっている。当研究室ではこれまでにPAF-AH(II)という新規脂質代謝酵素を同定しており、線虫を用いた解析から、PAF-AH(II)は胚発生期の上皮細胞に発現し、欠損変異体は上皮組織形成異常により胚生致死となることを見出している.また、試験管内の反応、および線虫を用いた遺伝学的解析から、PAF-AH(II)と高度不飽和脂肪酸合成経路の関係性が示されている。これらのことから、PAF-AH(II)は高度不飽和脂肪酸を持つリン脂質の代謝を制御し、上皮組織形成に重要な機能を担っていることが予想される。さらにPAF-AH(II)欠損マウスを作製した結果、PAF-AH(II)欠損マウスは酸化ストレスが関与する病態モデルにおいて、組織障害からの回復に異常を来すことを見出している。 今回、他の酸化ストレスモデルとしてFe-NTA投与による腎障害をPAF-AH(II)欠損マウスにおこなった。その結果、腎障害がPAF-AH(II)欠損マウスで顕著に抑制されるという予想外な現象が見られた。Fe-NTAによる腎障害には腎尿細管上皮細胞における活発なグルタチオン代謝が必要であることがこれまでにわかっている。そこで、PAF-AH(II)欠損マウスの腎臓のグルタチオン代謝について解析を行ったところ、腎臓のグルタチオンレベル、およびグルタチオン分解活性には差は見られなかった。しかしながら、現在グルタチオンの分解速度が野性型マウスに比べて遅い結果が得られており、今後PAF-AH(II)欠損マウス腎尿細管上皮細胞のグルタチオン輸送過程を解析することで、上皮細胞の極性輸送における本酵素の意義を解明し、医薬品開発の新たな標的を見つけていくことを目標としている。
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