2005 Fiscal Year Annual Research Report
骨髄及び腸上皮相互作用による腸管上皮幹細胞システム制御機構の解析
Project/Area Number |
04J11782
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岡本 隆一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 分泌型腸管上皮細胞 / Musashi-1 / IL-7 / Interferon Regulatory Factor-1 / 骨髄由来腸管上皮細胞 / 上皮再生 / Graft-versus-host Disease / 分化制御 |
Research Abstract |
本研究では、我々独自の全く新しい知見にもとづいて、腸上皮の分化・再生過程に骨髄細胞-腸上皮細胞相互作用が密接に関わる可能性につき追究している。1)分泌型ヒト腸管上皮の粘膜免疫における重要:a)IL-7受容体を介する細胞刺激が特に大腸炎局所における粘膜リンパ球に対し強い増殖活性を有すること見出した。b)ヒト腸管上皮細胞株の解析により、IL-7が杯細胞特異的に発現しているIRF-1により刺激依存性に発現誘導されている事を見出した。c)さらにIRF-1は腸管上皮において複数の免疫プロテアソーム構成タンパクの発現を転写レベルで直接制御している事を明らかとした。以上の成果は、ヒト杯細胞が局所のバリアー機能のみならず、腸管粘膜の免疫防御機構に重要な複数の機能を有し、ヒト大腸上皮における主たる構成細胞である杯細胞の分化制御が大腸炎治療における新規標的細胞となり得る可能性を明確にした。2)腸炎からの回復過程における骨髄由来腸管上皮細胞の分泌型上皮への誘導機構:a)ヒト異性間骨髄移植患者の生検組織の解析より、骨髄由来細胞がヒト腸管上皮を構成する4種の上皮分系譜が各々有する特異的機能をいずれも発現し得ることを明らかとした。b)一方、腸管上皮幹細胞のマーカー遺伝子の候補とされるMusashi-1の発現解析から、ヒト腸管上皮に定着した骨髄由来細胞は幹細胞の特性を有しない事を明らかとした。c)GVHDからの回復期において、上皮再生過程に出現する再生粘膜上皮では骨髄由来細胞は分泌型上皮への分化誘導が著しく増加する一方、吸収型上皮への分化誘導は減少することを明らかとした。d)骨髄由来細胞が上皮細胞を構成する過程において、細胞融合が関与する可能性は否定的であることを明らかとした。以上の成果は、ヒト骨髄由来細胞が上皮特異的機能を有すると同時に再生腸管上皮において分泌型上皮に誘導される独自の分化制御機構の存在を提示するものである。これらの成果により、骨髄由来細胞の分化機構を人為的に制御することが、腸管粘膜修復を標的とした新規治療法開発の基盤となる可能性が明確に示された。
|