2005 Fiscal Year Annual Research Report
二本鎖DNA切断修復系及び塩基除去修復系の連係と欠失及び挿入型変異の関連
Project/Area Number |
04J11804
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
柴田 淳史 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ポリ(ADP-リボース)合成酵素(Parp-1) / 塩基除去修復 / Non-homologous end joining (NHEJ) / 二本鎖DNA切断 |
Research Abstract |
本研究では、国内外で未だに研究の進んでいない非相同的組換え(non-homologous end joining, NHEJ)経路の異常を介する挿入型変異の機構を解明するためにポリ(ADP-リボース)合成酵素(Parp-1)欠損細胞を用いた細胞及び細胞粗抽出液を用いた系で、種々のDNA傷害後の二本鎖DNA切断とその修復効率及び変異について解析している。Parp-1は塩基除去修復(BER)系の重要な構成因子である。Parp-1欠損によるBERの停滞から二本鎖DNA切断、そしてNHEJ経路への乗り換え、欠失/挿入型変異が起こりうるかについて調べ、NHEJ/BERの異常と欠失/挿入/転位型変異の関連性を明らかにしようと試みている。 アルキル化剤処理後のBER系からDNA切断を介してのNHEJ経路への移行の可能性を調べるため、Parp-1欠損下におけるアルキル化剤methylmethanesulfonate(MMS)処理後の一本鎖DNA切断(SSB)及び二本鎖DNA切断(DSB)の量的変化を、パルスフィールドゲル電気泳動を用い検討した。昨年度までの研究において、MMS処理後のSSB及びDSB量は、Parp-1^<-/->マウス不死化胚性線維芽細胞(MEF)においてParp-1^<+/+> EFと比較し上昇が認められた。MMS処理後のDSBがS期での複製フォークを介して生ずるかを検討するため、DNA polymerase α及びδ/εの阻害剤であるaphidicolin添加後にMMS処理を行い、DSB量を検討したところDSB生成の部分的な抑制が認められた。従って、Parp-1欠損下で生成されるDSBの一部はS期での複製フォークの進行と崩壊を介して起きることが示唆された。一方、DNA複製を介さないで生ずるDSBを、Parp-1^<-/-> MEF粗抽出液を用いてin vitro MMS処理により作製したアルキル化損傷を有するプラスミドと反応し検出した。Parp-1^<-/-> MEFではParp-1^<+/+> MEFと比較し直鎖状のプラスミド、すなわちDSBの増加が認められた。DNA複製を介さないDSBは、DNAの二本鎖に対しそれぞれの鎖に近接したSSBが存在することで生理的条件下の熱変性により生じる場合と、SSBを有する部位の反対鎖をnucleaseが切断することにより生じる場合が考えられる。以上の結果を2005年第28回日本分子生物学会年会で発表し、現在はDNA複製を介さないDSB発生過程においてのParp-1の関与を更に検討している。
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