2006 Fiscal Year Annual Research Report
ソロモン諸島における慣習的資源利用制度を活用した地域発展の検討
Project/Area Number |
04J11838
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 求 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ソロモン諸島 / ガトカエ島 / ビチェ村 / 慣習的資源利用 / 地域発展 / コモンズ / 商業伐採 / 開発 |
Research Abstract |
本年度においては、これまでの資源利用に関する詳細な調査および歴史的な動態に関する調査結果を踏まえ、離島僻村地域社会の共通認識となっている価値観を抽出することを試みた。このための調査結果の再分析と文献資料による事例の相対化、既存研究の批判的な検討を2006年7月まで行った。その成果の一部は、コモンズ研究会などにおいて公表、さらには10月までに『環境社会学研究』誌への投稿準備を進めた。 11月から2007年1月にかけては、現地調査を行った。これまで長期調査を行ってきたビチェ村を除き、他の3村においては、人口の増加および開発の導入、土地紛争の激化、地域社会の統率者の離村などにより、地域住民全体が共通認識としうるような価値観、とくに資源利用における正当性概念が崩壊していた。ビチェ村においても、正当性概念は揺らぎつつあることがわかったが、他村と比較して、その再構築を志向する動きが強く、これをサポートするための諸活動を行った。具体的には、資源の共同利用・分配・相互扶助活動の活発化を進めるための共同漁撈による魚販売プロジェクトの推進と、森林の保護用地登記による共同利用地の確保である。 魚販売プロジェクトについては、利益の着服や天候不順による不漁などの要因により、一時中断を余儀なくされているが、今後も長期観測していく予定である。 また2月以降も、森林の保護用地登記を進めているが、いまだ確定しておらず、今後も何らかの橋渡しサポートが必要である。これらの諸活動が成功することによって、ビチェ村周辺の他村に対しても、何らかの波及的な効果、とくに地域社会のまとまりを取り戻そうという志向の強まりが生じることが期待される。
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