2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本における「男性同性愛者」の語りと性行動-エイズとともに生きる時代を背景として
Project/Area Number |
04J11912
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
新ヶ江 章友 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | HIV / AIDS / 男性同性愛者 / 日本 / 病いの語り / 身体 / 医療人類学 / セクシュアリティ / 民族誌 |
Research Abstract |
本年度は研究計画に基づき、以下の3点から研究を行った。 1、「厚生省HIV関連資料」約8,700枚を「輸血血液製剤によるHIV感染問題調査研究委員会」(委員長:養老孟司)より借用し、CD-ROMに取り込む作業を行った。これにより、社会学的観点からエイズ問題をさらに深く検証することが可能となった。今年度は特に、日本におけるエイズの言説と「男性同性愛者」との関係について、これらの資料を用いながら論文として発表し、学会発表も行った(ともに、「日本国際文化学会」において)。 2、これまで日本で行われてきたエイズ研究は、生物医学、公衆衛生、行動科学によるものがその大部分を占め、文化人類学者によるエイズ研究はほとんど行われてこなかった。今後の日本におけるエイズ研究に対する新しい視座を提供するために、海外の文化人類学者によるエイズ研究の文献を渉猟し、それらを整理した上で理論的構造を明らかにした。これらの文献整理によって明らかとなったことは、文化人類学者によるエイズの研究は「文化変化」をキーワードに、HIV/AIDSの予防実践において効果的な力となりうるということであった。これらの理論的位置づけについて、「日本エイズ学会」の学会雑誌に論文を投稿中である。また、これらの領域に関心のある研究者と共に研究会を開き、様々な議論も行った。 3、以上の研究と平行しながら、フィールドワークとインタビューも行った。本研究でインフォーマントとして出会った人々の語り、(特に、ライフ・ヒストリー)は、彼らの性行動を理解する上で重要であることが次第に明らかとなってきた。彼らが出会う場やどのようにして出会うのかなど、それらの観点を身体と場の関係としても考察した。これらの研究の一部は、来年度の「日本文化人類学会」で発表し、神戸で行われる「第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議」でもポスターセッションとして発表する。
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