2005 Fiscal Year Annual Research Report
《被動性》の概念と言語理論〜多言語比較に基づく記述的・理論的総合研究〜
Project/Area Number |
04J11913
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
斉木 美知世 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 《被動性》 / 受動文 / 自由与格構文 / 結果複合動詞 / 英語 / ドイツ語 / 日本語 / パラメータ |
Research Abstract |
《被動性》とは,人・モノが動作・出来事によって影響を受けたかどうかを問題にする概念であり,諸言語の記述的・理論的研究において重要な役割を果たしている.例えば英語では,(1)中間構文の成立条件,(2)受動名詞化形の成立条件,(3)受動文の成立条件,(4)擬似受動文の成立条件等の現象に関して,《被動性》に基づく一般化が提案されてきた.また,ドイツ語やフランス語における自由与格構文,日本語受動文,韓国語の二重対格構文などの記述にも,この概念がしばしば登場する.個々の事例については説明が成り立っているように見えるが,構文横断的・言語横断的なパラダイム全体を視野に入れたとき,《被動性》に統一的な定義を与えるのは困難である.本研究は,《被動性》が言語研究において果たしてきた役割を再検討し,この概念を言語理論の中に適切に位置づけることを一義的な目的とする.本年度の研究作業としては,(1)先行研究の調査,(2)自由与格構文に関する文献調査・インフォーマント調査,(3)諸言語の記述に現れる《被動性》概念の比較を計画し,これを報告書・博士論文・学術誌への投稿論文等の形にまとめることを目指していた.(1)/(2)については,ほぼ計画通りの作業を遂行した.(3)の課題は,日・英語の受動文の比較,および日・中語における結果複合動詞の比較を通じて行なった.前者の比較は主に実例の対照分析に基づくものであるが,用いたデータは報告書にも収録した.後者はインフォーマント調査を含むものであり,特に日本語の結果複合動詞については,実際には用いられるが文法的には「破格」と見なすべき用法を取り上げ,80名程度の母語話者を対象に調査を行なった.いくつかの興味深い事実が明らかになり,これを論文にまとめた.論文は日本語関係の専門誌に投稿する予定である.二年間の研究成果については報告書で総括するとともに,これを盛り込んだ博士論文の執筆も進めている.
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