2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J11953
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
畑中 美穂 筑波大学, 大学院・心理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 対人コミュニケーション / 社会的スキル / 会話 / 発言抑制行動 / 意思決定過程 |
Research Abstract |
1.以下の2点を目的として,日誌法を用いた調査を行った.第一の目的は,発言抑制行動が実際の相互作用においてどの程度生じているのかを把握することであった.第二の目的は,実際に相互作用の中で生じている発言抑制行動の中でどのようなものが社会的スキルや不適応徴候と関連するのかを明らかにすることであった.被調査者は大学生90名であった.調査の結果,1日あたりの他者との平均相互作用回数は5.66回,平均発言抑制回数は2.88回であった.したがって,相互作用2回に1回程度の割合で発言抑制行動が生じていることが明らかになった.日誌法に記録された発言抑制行動と社会的スキルやコミュニケーション・スキルとの関連をみると,スキルが高い者ほど日常の相互作用において発言抑制行動を行う割合が高かった.スキルが高い者は,とりわけ会話状況やその場でとるべき行動の規範にあわせた抑制や,相手を配慮した抑制を多く行っており,こうした発言抑制行動は会話不満感の低さと関連していた. 2.これまで行ってきた研究に,今年度新たに行った二つの調査を加えた合計12の研究をまとめ,意思決定という観点から発言抑制行動の生起過程モデルを構築した.具体的には,発言するか抑制するかを決定する際に,まず相手の状態や周囲の状況をふまえた行動の適切性が判断され,次に行動後の否定的な結果の検討が行われ,その後,行動実行に必要なコミュニケーション・スキルの欠如に関する意識が生起するという,発言抑制行動の生起過程が実証データに基づいてモデル化された.上述の生起過程にそって発言抑制行動と適応徴候との関連を検討した結果,相手の状態や周囲の状況を十分考慮し,行動後の悪い結果や自身のスキルの乏しさに過剰にとらわれずに決定された発言抑制行動は,適応的な価値を持つことが明らかにされた.この成果は,2004年度の学位論文としてまとめられ,筑波大学に提出された.
|