2004 Fiscal Year Annual Research Report
NPOの組織理論-N.ルーマン組織理論からのアプローチ
Project/Area Number |
04J11956
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小野 奈々 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | NPO / 市民活動 / ボランタリーの失敗 / 価値同調 / 人道支援 / NGO / ブラジル連邦共和国 / 環境保全 |
Research Abstract |
NPOの形態をとる市民活動にしばしば観察されるある局面を「価値同調(philanthropic value-conformity)」を鍵概念に考察した。そしてこれを、非営利の特徴をもつ市民活動が本来的に備え持つ独自の課題、すなわち、レスター・サラモンが指摘した「ボランタリーの失敗(voluntary failure)」のひとつとして指摘した。 簡単に説明するとそれは、参加する人が活動にかかわる価値を強く内面化することで、その価値に同調して行為すること自体が、参加する人の欲求になり、これが自己目的化するという「失敗」である。その結果、活動に参加していた人たちにとって、本来意図していた活動目的から、活動内容自体が離れたままになってしまうという点で、問題が生じるというものである。 事例として、ある人道援助団体をとりあげた。この団体の活動の中には、必ずしも現場に結びつかなくても、活動にかかわる価値に同調できる側面があり、月日が経つ内にそうした活動ばかりに落ち着こうとするようになった。本研究では、現時点においてひとまずこれを、NPOがかかえる「価値同調」の課題としてとらえることにした。 また、これと同時並行して、ブラジル連邦共和国のNPOの現状を知るための基礎調査と資料収集を行った。基礎調査としては、近年NGOとしてブラジルで活動を始めたばかりの3つの現地NGOでの聞き取り調査を行った。具体的には、サンパウロ州ミランドーポリス郡(Sao Paulo, Milandopolis)に位置する日系ブラジル人の協同農場、弓場協同農場がNGOになったという事例と、ミナス・ジェライス州ゴウベイア市(Minas Gerais, Gouveia)を拠点に活動を展開する環境NGO、カミーニョス・ダ・セーハ(Caminhos da Serra)の近年の活動状況、ミナス・ジェライス州ベロオリゾンテ市を拠点に、大学や市町村との連携を特徴とした環境保全活動を展開する環境NGO、マニュエルザオン(Manuelzao)の活動指針を聞き取り調査した。
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