2004 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀への転換期カナダにおけるフランス系ナショナリズム
Project/Area Number |
04J12054
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田澤 卓哉 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フランス系カナダ / ケベック / ナショナリズム / 南アフリカ戦争 / イギリス帝国 / 近代史 |
Research Abstract |
今年度は、19世紀末から20世紀初頭に見られたフランス系カナダ・ナショナリズムの分析を中心に研究を行った。具体的には、イギリスと南アフリカの二国(トランスヴァール共和国、オレンジ自由国)の間で戦われた南アフリカ戦争(1899〜1902年)の時期に、アンリ・ブラサらのフランス系カナダ人によって主張されたナショナリズムなどの思想の分析を行った。一次史料として当該時期のカナダ連邦議会(上院・下院)議事録、個人文書、カナダ・ケベック州で発行され読まれた仏語紙などを用い、本国イギリスが戦争を推し進める中でフランス系カナダ人が訴えたカナダの孤立主義や反帝国主義を中心に思想の読み取りを試みた。カナダがイギリス帝国を構成する一国家として戦争に参加すべきか否かという問題をめぐり、当時のカナダ社会で多数派を占めていたイギリス系カナダ人と少数派のフランス系カナダ人の対立が顕著に浮き彫りになり、カナダ国外における戦争への無関心・イギリス帝国内でのカナダの孤立主義を基軸とするフランス系カナダ世論の論調を抽出できたことが本研究での成果である。 上記の研究を進める上で必要となった史資料の収集のため、平成16年7月14〜23日の期間、カナダ国立図書館・公文書館(オタワ)において調査を行った。また、カナダ史関連図書を中心とした二次資料等を用いて、カナダ史・ナショナリズム・民族問題など、本研究に深く結びつく関連分野の理解を深めた。 これまでに行った研究は、「南アフリカ戦争期カナダにおけるフランス系ナショナリズム」として現在論文を執筆中であり、今後学術雑誌への投稿を予定している。
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