2005 Fiscal Year Annual Research Report
児童の抑うつ症状に影響を及ぼす認知的情報処理過程の検討と認知療法プログラムの開発
Project/Area Number |
04J12063
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 寛 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 児童 / 抑うつ / 情報処理過程 / 認知療法 |
Research Abstract |
本年度は,前年度の研究において構築された,児童の抑うつ症状に関連する認知的メカニズムを説明するモデルをより詳細に検証することを目的とした研究を主に遂行した. 本研究において構築された認知モデルにおいては,「スキーマ」→「推論の誤り」→「児童思考」→「抑うつ症状」という一連の認知プロセスによって児童の抑うつ症状が引き起こされていることが示唆されている.これらの認知プロセスにおいて仮定されている変数間の予測関係についてより厳密に検討するため,縦断的研究デザインを用いた調査が実施された.その結果,スキーマから推論の誤り,推論の誤りから自動思考,自動思考から抑うつ症状という,モデルに含まれるすべての予測関係が成立していることが示された.このことから,児童の抑うつ症状が「スキーマ」→「推論の誤り」→「自動思考」→「抑うつ症状」という認知的情報処理過程を経過して生じていることが示唆された. また,このような認知的過程におけるストレッサーの機能についても検討された.先行研究における指摘に基づき,認知的過程に対するストレッサーの関与を説明するモデルとして素因ストレスモデル(diathesis-stress model)とストレス媒介モデル(stress mediation model)の比較検討が行われた.その結果,横断的・縦断的のいずれの研究デザインにおいても,素因ストレスモデルの妥当性を支持する結果は認められなかった.一方,ストレス媒介モデルは,横断的研究と縦断的研究の双方において,その妥当性を示す結果が得られた.以上のことから,抑うつ症状を引き起こす一連の認知的過程において,ストレッサーはスキーマに影響を与える要因として機能していることが明らかにされた.
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Research Products
(6 results)