2004 Fiscal Year Annual Research Report
金属ダイマー骨格を用いた一次元金属の新規合成とその電子構造の解明
Project/Area Number |
04J12103
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Research Institution | Kyushu University |
Research Fellow |
小澤 秋男 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | MMX-chain / 電子相関 / 高圧下電気伝導度 / 強磁性 |
Research Abstract |
ハロゲン架橋一次元錯体と部分酸化型金属一次元錯体の探索と合成法の確立を行った。 まず、Ni_2(CH_3CS_2)_4とNi_2(C_2H_5CS_2)_4を合成し、種々のアンモニウム塩のカウンターアニオンと組み合わせて有機溶媒に溶解させ、溶液としたものに定電流を流して電気化学的にニッケルの酸化を行った。その結果、原料のニッケル錯体としてNi_2(CH_3CS_2)_4を用い、カウンターアニオンとして(C_4H_9)_4NBF_4、(C_4H_9)_4NPF_6、(C_4H_9)_4NClO_4を用いたものについて黒色の粉末が得られた。この試料について粉末X線回折測定を行った結果、結晶性の物質であることが確認された。 次に、Ni_2(CH_3CS_2)_4に対して有機溶媒中でI_2を拡散させてニッケルを化学的に酸化させることによってハロゲン架橋一次元錯体Ni_2(CH_3CS_2)_4Iを合成した。I_2拡散時の温度を精密に制御して合成を行った結果、拡散時の温度を22℃以下に保つと単斜晶系のNi_2(CH_3CS_2)_4Iが得られ、23℃以上に保つと三斜晶系のNi_2(CH_3CS_2)_4Iが合成されることが分かった。両者のNi_2(CH_3CS_2)_4Iについて磁化率測定を行うと単斜晶系のNi_2(CH_3CS_2)_4Iは反強磁性的挙動を示し、三斜晶系のNi_2(CH_3CS_2)_4Iは微量ながら室温で強磁性成分の存在を示した。単斜晶系のNi_2(CH_3CS_2)_4Iについては0〜8GPaの超高圧下で直流電気伝導度の温度依存性を測定した。その結果、単斜晶系のNi_2(CH_3CS_2)_4Iは0.5GPaにおいてニッケルの電価状態の変化によると見られる相転移を示した。温度依存性は全温度領域において半導体であり、その活性化エネルギーは2GPaにおいて183meV、8GPaにおいて95meVと計算され、高圧力によって電子が移動しやすくなっていることが確認された。
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