2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J50102
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒木 暁人 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 反対称的統語理論 / 日本語右方転移文 |
Research Abstract |
本研究の目的は,人間が言語活動をする際に前提とされる知識や,その知識の具体的な条件等に関して生成統語論の観点から考察し,日本語文法(句構造)モデルの構築に貢献することにある.特に本研究では,移動現象に焦点を当て統語構造における当該の操作がどのように制限されるのかについて,Kayne(1994)が提案する反対称的統語理論に基づき考察を進めてきた.この理論は概略「統語構造は語順を反映する」と述べられ,従来の句構造に関する記述的一般化を説明しうるという点でとても興味深い.これによると,諸言語は基底構造では同一構造(SVO)を保持し,移動操作は左方のみに限られると規定されるため,基本語順がSOVであるとされてきた日本語などでは,従来採られてきた分析とは異なったアプローチが必要となる. 上記背景を踏まえ,本研究では日本語右方転移構文をとりあげ,従来右方移動の関与が指摘されてきたこの構文が,右方移動ではなく左方移動の一例として分析されるのが妥当であると論じた.その際,本研究が仮定する構造は先行研究で述べられている諸特性を説明するだけでなく作用域解釈,束縛現象等の新たな事実から経験的に支持されることも同時に示した. 帰結として,本研究で行われた分析が正しい限りにおいて,左方移動のみを可能な移動操作と位置づける反対称的統語理論は経験的に支持されることになる.更に,この理論の下位概念を構成するKayne流のc統御,主要部後置型言語における動詞句指定部への目的語移動,主要部先頭性,そしてCP指定部へのTP移動等が分析上重要な役割を果たすことから,これらが日本語の統語構造において機能することも併せて示唆した.
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Research Products
(2 results)