2005 Fiscal Year Annual Research Report
中国の魏晋南北朝・隋唐時代における教育の実態、およびその国家・社会との関係
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04J50801
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
音成 彩 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 金楼子 / 戒子篇 / 家訓 / 顔氏家訓 |
Research Abstract |
「梁元帝『金楼子』について」と題した論文を執筆、完成させた。その内容は以下の通りである。 表題に掲げた『金楼子』とは、南朝文化の極盛期を生きた梁武帝の第七子、元帝蕭繹の著作である。本書は、すぐれた才能を持ちながら、梁末の動乱の中で、悲運の死を遂げた元帝が、「一家の言」を記した書物として注目され、いくつかの先行研究が存在しているが、それらのほとんどが、自序篇、立言篇に基づく元帝のパーソナリティーについての考察が中心である。しかし、こうした観点とは別の角度からみるとき、本書は、これまでの研究が指摘する相貌とは別の一面を持っていることがわかる。それは本書が家訓書という面を持っていることである。ゆえに、本稿では当時の皇帝自らが子弟の教育についての思想を著したものとして、特に戒子篇に注目して考察を行った。 まず、本書が家訓書としてとらえられることを具体的に指摘し、一方、戒子篇の記述については、他書からの引用が大部分を占めてはいるが、その引用された文章は、元帝の思想が色濃く反映されたものであると考えられることを明らかにした。 さらに本書は、魏晋南朝時代の家訓類を多く引用することによって、それらの中に点在していた教育思想をまとめる役割を果たしたこと、また、本書は中国の家訓書として、最も著名かつ詳細である『顔氏家訓』と形式が類似し、内容面においても、君子としてのあり方や、学問に対する姿勢等の点で共通の認識がみられ、顔之推が元帝の学問に共感をいだいていたことなどから、その『顔氏家訓』への大きな影響をみることができることを指摘した。 以上のことから、本書は、中国における「家訓書の原型」であるととらえることができると結論づけた。 本論文は、平成十八年四月に刊行される、九州大学東洋史論集第三十四号に掲載されることが決定している。
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