2004 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア諸国における社会的環境管理能力の形成と制度変化の比較分析
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04J52871
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡田 紗更 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 社会的環境管理能力 / 制度変化 / 東アジア / 指標 |
Research Abstract |
社会全体が環境問題に対処する能力は、「政府」、「企業」、「市民」の3つのアクターの能力から構成されるという視点を明らかにした(社会的環境管理能力のアクター・アプローチ)。また、工業化の社会的能力を論じた末廣(2000)の研究を参考に、社会的環境管理能力を構成する3要素を設定した。第1は、どのような環境政策・環境対策をそれぞれのアクターがもっているのかという政策・対策要素である。第2は、政策や対策の実施を規定する人的・組織的資源という要素である。第3は、以上2つの要素を規定する知識・情報・技術という要素である。3アクターのそれぞれが、これら3つの要素を有していると考える(ファクター・アプローチ)。アクター・アプローチとファクター・アプローチとを併用することにより、社会的環境管理能力の具体的な把握が可能となることを示した。 次に、新制度学派の議論をふまえ、ガバナンスの概念は、個人や組織、社会の行動を規定する制度のあり方そのものであることを明らかにした。環境ガバナンスを環境にかかわる社会システム(制度の束)としてとらえ、社会的環境管理能力はその制度の束としてのシステムを最大限に稼動させる潜在能力であると考えることが可能である。制度をフォーマルな制度(成文法などの公式化・形式化されたルール)とインフォーマルな制度(社会的規範・習慣などの非公式な、暗黙のルール)としてとらえ、社会的環境管理能力がそれらの制度変化を誘発するという動的なメカニズムを山口県宇部市の公害対策経験を事例に理論的な発展モデルで示した。すなわち、社会的能力の向上によってフォーマルな制度の変化、もしくは社会的規範や習慣といったインフォーマルな制度変化が引き起こされる。この制度変化は、社会的能力の更なる向上を可能とし、こうした社会的能力の形成によりさらなる制度の変化が起き、続いてこれが社会的能力の一層の向上を可能とする。
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Research Products
(4 results)