2005 Fiscal Year Annual Research Report
魚類養殖場水域の物質循環過程の解明と水域環境の保全
Project/Area Number |
04J53311
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
中瀬 玄徳 近畿大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | 持続的魚類養殖 / 種苗生産 / 大量へい死 / 細菌群集構造 / FISH(fluorescence in situ hybridization) |
Research Abstract |
今年度は魚類養殖産業において、"川上"に当たる陸上の魚類種苗(仔魚)の生産水槽に重点をおいて調査・研究を行った。調査場所は田辺湾に面する近畿大学水産研究所水産養殖種苗センター(和歌山県白浜町)と同すさみ事業場(和歌山県すさみ町)である。 種苗生産は魚類養殖産業の根幹をなす重要な過程であり、そもそも種苗生産なしでは魚類養殖は成立しない。その種苗生産過程において、大きな問題のひとつとなっているのが、種苗の大量へい死である。大量へい死の原因としては、内的要因である親魚や受精卵の質、外的要因である餌料および飼育水の環境条件の質などが考えられる。この大量へい死の対策を講じることは、養殖産業全体にとって非常に重要であり急務といえる。そこで、種苗の大量へい死の原因の解明、あるいは抑止方法の開発を目的として、特に飼育水環境に注目して研究を行った。 まず、種苗生産水槽の細菌群集構造を解析した。調査対象とした魚種は、主要養殖魚種であるマダイ、将来的に量産の期待がかかるクロマグロである。高級養殖魚であるクエの種苗生産水槽についてもサンプリングを行った。さらに、マレーシア国立サバ大学ボルネオ海洋研究所において2回、述べ65日間の種苗生産水槽の調査を行った。ボルネオ海洋研究所では、東南アジアにおいて高級食材とされているマーブルゴビーの仔魚飼育水を調査対象とした。 その結果、種苗生産の初期段階において、飼育水中の細菌群集の変化が仔魚の生残に影響を与えていることが示唆された。飼育の初期段階においては、可能な限り飼育水の細菌群集を制御した方が効率的な飼育ができ、飼育水中の細菌群集の制御には、植物プランクトン細胞を飼育水に添加することが有効であることが示された。
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