2004 Fiscal Year Annual Research Report
自発的結社による市民的公共圏の形成-18〜19世紀コンパニョナージュと手工業社会
Project/Area Number |
04J54061
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鹿住 大助 千葉大学, 大学院・社会文化科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 同業組合 / コルポラシオン / コーポラティズム / ギルド / 手工業 / 職人 / フランス |
Research Abstract |
本年度は18世紀フランスにおける同業組合制度に注目し、フランスでの史料収集・分析を行った。同時代のフランスにおける商工業の多くは、他のヨーロッパ諸国と同様、各都市ごとに同業組合を組織し、同じ業種に属する親方・職人・徒弟に対する統制や相互扶助をおこなっていた。本年度は特にリヨンの同業組合の規約を中心とする史料を収集し、制度面の分析を行うこととした。同業組合規約はその制度を明文化し、権力の承認・特権を得るために、同業者たちによって王権や市政体に提出されたものである。これら規約からは、権力機関と組合との関わりや、コンフレリを通じた宗教行事の運営のされ方、親方・職人・徒弟の階層区分と上昇方法、仕事・製品に対する統制など、同業組合制度の様々な側面を理解することができる。 従来、同業組合は入会規制や階層性をもつ閉鎖的組織であり経済的自由主義を阻害するものとして、あるいは、かつては存在した雇用主と労働者の調和のとれた社会の象徴としてみなされてきたが、1970年代頃から、社会史の手法を用いたより実証的な歴史研究が進められてきている。また近年では特に、アンシャン・レジーム期から19世紀に至る、フランスのコルポラティスム(コーポラティズム)の歴史に関する議論の中で、分析対象とされている。同業組合の存在がかつてのフランス社会、特に都市の社会の編成の根幹に関わっていたことはこれまでも指摘されている点であるが、本研究では18-19世紀の手工業親方と職人との関係の変化を分析したいと考えており、この同業組合の存在をどのように理解するかは、今後の研究において重要な軸のひとつになると考える。今年度収集した規約を通じて同業組合の制度的な側面を分析し、さらに運営のなされ方などの実態面を把握することで、当時の同業組合の構造を明らかにしたいと考える。
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