2004 Fiscal Year Annual Research Report
虫瘤形成昆虫アオキタマバエとその寄主植物の生活史同調性に関する進化生態学的研究
Project/Area Number |
04J54181
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今井 健介 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 虫こぶ / 寄主植物 / 物理的防衛形質 / 進化的相互作用 / フェノロジー / 地球温暖化 / 生活史 / 同時性 |
Research Abstract |
寄主個体間、寄主個体内比較の手法により、アオキミタマバエの京都個体群が最適な状態にある幼果を選択的に利用するという仮説の検証を試みた。タマバエは特に寄主個体間で、最適フェノロジー状態にある幼果を特に好んで攻撃した。結果的に、タマバエは寄主フェノロジーに対する分断(自然)選択を及ぼしており、個体群内でのアオキの遺伝的多様性の保持に貢献していると思われた。 また、寄主個体間比較の手法により、アオキミタマバエが羽化時期を能動的に調節しているという仮説の検証を試みた。タマバエの羽化時期は、早熟なフェノロジー傾向を見せた寄主ほど早くなり、タマバエが羽化羽化タイミングをある程度コントロールしていることが予測された。これにより、地球温暖化のような気候変動下でもある程度の順応性を有することが示唆された。しかし、順応能力は比較的限られたものであった。 国内各地でアオキミタマバエ個体群を探索し、2年目以降の調査に備えた予備調査を実施した。気候的には主調査地である京都個体群よりも寒冷な北陸で調査を行った。しかし、北陸では京都個体群よりもタマバエの出現時期が早く、単純な温度に対する対応では説明がつかなかった。北陸では京都個体群とは異なる形態の共進化が起こった可能性がある。これは、本種の進化の地理的なダイナミクスを考慮する上で興味深い。しかし、北陸でのアオキのフェノロジーに関してはデータが得られなかったため、今後の研究が必須である。
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