Research Abstract |
ヒトの音声言語に関連する中枢処理機構について神経科学的に解明するため,大きく2つ((1)音声の表出(2)音声の認知)に分けて検討した. まず,音声の表出に関しては,主に発声中の自分の声に対する聴覚モニタリング機構の解明をめざした.発声中は聴覚だけでなぐ舌や口周囲の感覚や運動に関連する種々の神経活動が同時に生じるため,発話中の自分の声に対する聴覚反応を検討する際には,他の感覚・運動情報との協調構造の解明が期待されている.本研究では,発語に関連する事象関連脱同期(Event-related desynchronization : ERD)・同期(Event-related synchronization, ERS)の解析により,構音の企画・実行,呼吸コントロールやそれらのモニタリングに特異的な脳領域とその律動変化について検討し,その成果の一部がThe 8th International Evoked Potentials Symposium(IEPS)および12th World Congress of Psychophysiology,第34回日本臨床神経生理学会にて報告され,IEPSではポスタ賞を受賞した.また,ヒトが発声する際,喉頭調節によって声区(低・中音域と高音域)の変換様式が中枢の準備過程へ及ぼす影響について,これまでの成果についてまとめた(臨床脳波). 次に,音声の認知に関わる基礎的な研究として,特殊な周波数特性を示す音を聴取した際の,聴覚野における脳磁場反応の特異的な適応と側抑制の関係について検討した.本研究から,短時間での聴覚入力による聴覚野の神経活動では,側抑制が順応よりも有意な抑制系であり,両抑制系ともに時間の経過でその効果が減少することが示唆された.この成果の一部は第19回日本生体磁気学会,the 14th International Conference on Biomagnetismにて報告された.
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