1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05215222
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
武末 真二 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (60183860)
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Keywords | セルオートマトン / 加法的保存量 / 熱伝導 / フーリエ則 / エルゴード問題 |
Research Abstract |
可逆セルオートマトンの族ERCAに関してはこれまでの研究により,どの時間発展のルールがどのような加法的保存量を持ち,どのような熱力学的振る舞いを示すかは明らかになっているが,それがルールのいかなる性質によるものであるかは不明であった。そこで今年度は,ルールの加法的保存量の個数と熱伝導における拡散的性質の関係に着目し,i)ボルツマン方程式と同じように局所的な分布関数の時間発展で系の時間発展を近似した場合と、ii)2種類のルールを時間的に混在させた場合の2種類のシミュレーションを行った。i)の場合,nサイトの分布関数を用いたときには,加法的保存量の密度関数もnサイトの変数によるものだけが効き,それより多くの変数による密度関数を持つ保存量は,たとえ元の系が持っていたとしても無効になることが示される。n=1と2の場合についてシミュレーションを行い,どのルールにおいても例外なく,生き残っている保存量が1個だけの場合にフーリエ則などの拡散的な振る舞いが見られ,複数の保存量がある場合には弾道的(ballistic)になるという結果が得られた。ii)の場合には混在する両方のルールに属する保存量だけが有効となり,同じ変数範囲を持つ密度関数の競合が試せる点でi)と相補的であるが,この場合もi)と同様に有効な保存量が1個だけの場合にのみフーリエ則が実現し,1例だけであるが複数の保存量がある場合には弾道的になり温度勾配も形成されなかった。以上の結果は時間発展則が許容する保存側と拡散的挙動の関係に示唆を与えるものであり,今後はなぜ保存量が1個の場合に拡散的挙動が一般的であるのか,その理由の解明が焦点となる。
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