1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05301007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 健一 東京大学, 文学部, 教授 (80011328)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 清和 埼玉大学, 教養学部, 教授
礒山 雅 国立音楽大学, 音楽学部, 教授
戸澤 義夫 群馬県立女子大学, 文学部, 教授
藤田 一美 東京大学, 文学部, 教授 (60065480)
坂部 惠 東京大学, 文学部, 教授 (30012503)
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Keywords | 価値 / 文化 / 比較 / 趣味 / 批評 / 藝術 / 選好 / 判断 |
Research Abstract |
これまでのところわれわれは、夏期休暇中を除き月1回のペースで、計7回の研究会を持ってきた。特記すべきは、そのうちの1回が、われわれの研究分担者1名に加えて、来日中の外国人研究者2名をパネリストとして、英語によるシンポジウムだったことである。その2名(ポーランド、グダニスク大学のB・ヂェミドック教授とオランダ、ヤン・ファン・エイク藝術大学のH・ペッツォルト教授)は、いずれも国際美学会の中心メンバーだが、このシンポジウムにおけるわれわれのディスカッションは彼らの非常に高い評価を得た。このシンポジウムを含めると計9本の研究報告をえたことになるが、その主題は極めて多岐にわたる。全体を総括して幾つかの論点にまとめるのは尚早だが、主題を枚挙するならば次の如くである。価値の存在論的考察の面では、特に価値が比較に基づき、その意味で体系的な性格をもち、更に客観性=公共性を主張することを確認した。また、やまと言葉のなかに秘められた価値の契機を析出して価値論を構築する試みや、西洋の古典哲学としてのプラトンとアリストテレスにおける価値の思想の考察、ポストモダンと呼ばれる現代における価値のあり方についての考察などが提起された。特に藝術一般に関連しては、美的価値と藝術的価値の区別の問題が論じられ、「悪しき趣味」とされてきたものについての再検討が試みられた。更に個別的な問題としては、文部省唱歌のなかに込められてきた倫理的価値、教養主義に傾斜している藝術批評における価値的観点の重要性、境界が曖昧になりつつある現代のクラシック音楽とポピュラー音楽のそれぞれの聴き方における価値の違いなどが取り上げられてきた。
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Research Products
(24 results)
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[Publications] Ken-ichi SASAKI: "Principes modernes de la valorisation de part=Mise en question de la valeure esthetique." Horizons philosophiques,Montreal. Vol.3 No.2. 89-101 (1993)
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[Publications] 佐々木健一: "藝術の価値原理-近世美学の一断面" 美学. 44巻2号. 1-11 (1993)
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[Publications] 佐々木健一: "演出の時代" アスティオン. 30. 180-194 (1993)
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[Publications] 佐々木健一: "二つのギリシャ悲劇" アスティオン. 31. 184-198 (1994)
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[Publications] 坂部 惠: "構想力の射程" 竹市、坂部、有福編『カント哲学の現在』. 126-146 (1993)
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[Publications] 坂部 惠: "九鬼周造と〈双子の微笑〉" 大橋良介編『国際高等研究所シンポジウム、文化の翻訳の可能性』. 206-212 (1993)
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[Publications] 坂部 惠: "〈ふるまい〉と〈ふり〉" 吉沢伝三郎編『行為論の展開』. 227-244 (1993)
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[Publications] 庄野 進: "音環境の零度" 騒音制御. 17-4. 12-15 (1993)
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[Publications] 長野順子: "カントにおける美的判断と多元主義-「中立の観察者」との関係から-" 美学. 44巻1号. 1-12 (1993)
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[Publications] NAGANO Junko: "Aesthetic Judgement and Pluralism in Kant-In connection with Adam Smith's ‘Im partial Spectator'" 群馬県立女子大学紀要. 15(予定). (1994)
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[Publications] 村山康男: "写真と絵画-19世紀フランスの画家と写真" 世界美術大全集第21巻「レアリスム」(小学館). 21. 369-376 (1993)
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[Publications] 加藤好光: "ミメシスの語義" 東京大学美学藝術学研究室紀要 研究. 12(予定). (1994)
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[Publications] 小田部 胤久: "可能的世界と創造の類比-ライプニッツ・ヴォルフ学派の美学" 『思想』(岩波書店). 826号. 114-136 (1993)
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[Publications] 小田部 胤久: "「芸術作品は自然の所産より高次である」-ヘーゲル美学における自然と芸術" 『現代思想』(青土社). 21巻8号. 225-235 (1993)
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[Publications] 小田部 胤久: "芸術ジャンル間の翻訳あるいは照応について-レッシング『ラオコーン』に即して" 大橋良介編『文化の翻訳可能性』(人文書院). 274-281 (1993)
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[Publications] 小田部 胤久: "芸術と自然-ドイツ観念論の美学における「自然模倣」説の帰趨-" 西川富夫編『自然の根源力』(ミネルヴァ書房). 154-177 (1993)
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[Publications] Tanehisa Otabe: "Transformation of German Aesthetics in the 18th Century Seen from Semiotic Point of View" Transactions of the Eighth International Congress on the Enlightenment. 1467-1471 (1993)
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[Publications] 久保光志: "風土・環境・藝術-十八世紀フランスを中心に-" 斎藤稔編『藝術文化のエコロジー』(勁草書房). (予定). (1994)
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[Publications] 西村清和: "シェリング美学の近代性の測定-崇高と醜を試薬として" 日本シェリング協会編「シェリング年報」. 1. 41-50 (1993)
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[Publications] 西村清和: "かくれんぼとコケットリー-『龍潭譚』を読む" ポーラ文化研究所「顕わすフィクション/隠すフィクション」. 186-227 (1993)
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[Publications] 西村清和: "イロニーの精神・精神のイロニー" 神林編「芸術の射程」. 93-117 (1993)
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[Publications] 西村清和: "芸術と遊び" 神林他編「芸術学フォーラム」. 2(予定). (1994)
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[Publications] 西村清和: "キッチンの美学-消費社会の美的環境" 斉藤編「芸術のエコロジー」. (予定). (1994)
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[Publications] 西村清和: "シェリングにとってマクベスは悪党か?" 日本シェリング協会編「シェリング読本」. (予定). (1994)