1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05301007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 健一 東京大学, 文学部, 教授 (80011328)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 清和 埼玉大学, 教養学部, 教授
礒山 雅 国立音楽大学, 音楽学部, 教授
戸澤 義夫 群馬県立女子大学, 文学部, 教授
藤田 一美 東京大学, 文学部, 教授 (60065480)
坂部 恵 東京大学, 文学部, 教授 (30012503)
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Keywords | 美学 / 価値 / 18世紀 / グライス / ニーチェ / ふるまい / ブルクハルト / 崇高 |
Research Abstract |
本年度は6回の研究会を開催した。昨年度は報告を提出したあとの3月にも研究会を催したが,今年度の分に限って言えば,それぞれの研究報告者とその主題は次の如くである。先ず,尼ヶ崎彬は舞踊を対象とし「藝術的価値と身体」について論じた。その際,舞踊批評において用いられる評言を手掛かりとして,訓練された踊り手の身体において認められる独特な藝術的価値を明らかにした。小田部胤久は18世紀のドイツ美学,すなわちまだ価値の概念が十分に術語化していなかった時代の美学思想のなかに潜在している価値論を,再構成することを試みた。長野順子は「生の強度」という観点から,バ-クからカントをへてニーチェに至る崇高概念を研究した。そして,とくにこの種の美的範疇に伴う性差のイメージを,理論書のテクストから抽出して,そこに新しい光を当てた。加藤好光は,西田幾太郎の述語論理と場所の概念に注目しつつ,これを生命科学や生気論哲学によって再記述することによって,「美的体験の生命関係的基礎づけ」を試みた。大石昌史は,価値の再評価を行ったニーチェのニヒリズムの哲学において,絶対的肯定によって美的価値が創造されるという思想を捉え,その理論をあとづけた。伊藤るみ子はP・キヴィーの論考を手掛かりとして,音楽における作品の演奏の関係,特に「演奏のauthenticity」の問題を考察した。この他,代表者佐々木が価値概念についての原理的考察を著書の一部として公表するなど,各研究分担者の独自の研究もあるが,全体の研究成果のうち,公表可能な段階に達したものを集めて研究成果の報告書を編んだ。
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Research Products
(27 results)
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[Publications] 佐々木健一: "演劇の空間体験-もう一つの演劇の本質" 庄野進・高野紀子編『音楽のテアトロン』(剄草書房). 2-19 (1994)
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[Publications] 礒山雅: "劇場は世界か-マッテゾンの音楽劇場論" 庄野進・高野紀子編『音楽のテアトロン』(剄草書房). 20-35 (1994)
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[Publications] 庄野進: "新しい劇場音楽" 庄野進・高野紀子編『音楽のテアトロン』(剄草書房). 36-54 (1994)
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[Publications] 庄野進: "どんな類似も純粋に偶然的だ" 現代思想. 5号. 150-153 (1994)
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[Publications] 西村清和: "シェリングにとってマクベスは悪党か?" 西川富雄監修『シェリング読本』. 374-388 (1994)
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[Publications] 長野順子: "近代性のうちなる「自然」と暴力-ワーグナーの場合" ワーグナーヤ-ルブ-フ1994(予定). (1995)
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[Publications] 尼ヶ崎彬: "和歌のレトリック" 言語. 23-6. 30-38 (1994)
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[Publications] 尼ヶ崎彬: "枠と緑-日本詩歌の修辞法" 叢書 比較文学比較文化. 5. 35-61 (1994)
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[Publications] 尼ヶ崎彬: "舞踊の二つの形" 形の文化誌. 2. 110-117 (1994)
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[Publications] 尼ヶ崎彬: "劇的なるものの起源" シアターアーツ. 1. 49-58 (1994)
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[Publications] 尼ヶ崎彬: "人との邂逅-利休における茶の理念II" 学習院女子短大紀要. 32. 1-27 (1995)
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[Publications] 尼ヶ崎彬: "From Noh to Butoh" THE UNESCO COURIER. (1995)
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[Publications] 小田部 胤久: "芸術・自然・歴史-ヴィンケルマンとシェリング-" 西川富雄監修『シュリング読本』(法政大学出版局). 155-174 (1994)
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[Publications] 小田部 胤久: "触覚の美学のために" 『立ち上がる境界』(辰野郷土美術館). 4-7 (1994)
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[Publications] 小田部 胤久: "Transformation of the “ars analogi rationis"" 文化学年報(神戸大学文化学研究科). 16. (1995)
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[Publications] 小田部 胤久: "〈芸術家-芸術作品-亨受者〉という関係の成立へ向けてーメンデルスゾーンによる美学の刷新" 美學. 180号. 23-33 (1995)
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[Publications] 加藤好光: "ゲーテ的象徴概念の形成" 美學. 180号. 34-44 (1995)
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[Publications] 加藤好光: "四行詩「眼が太陽のようでなかったならば…」について" ゲーテ年鑑. 37. (1995)
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[Publications] 加藤好光: "Zur Definition des eidetischen Anschauungsbildes" JTLA(Journal of the Faculty of Letters.The University of Tokyo.Aesthetics). vol.19(予定). (1995)
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[Publications] 佐々木健一: "演出の時代" 春秋社, 238 (1994)
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[Publications] 佐々木健一: "美学辞典" 東京大学出版会, 300 (1995)
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[Publications] 礒山雅: "マタイ受難曲" 東京書籍, 548 (1994)
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[Publications] 庄野進・高野紀子(編著): "音楽のテアトロン" 剄草書房, 216 (1994)
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[Publications] 小野部胤久: "象徴の美学" 東京大学出版会, 417+vi (1995)
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[Publications] 西村清和・枚枝到: "笑う人間/笑いの現在" ポーラ文化研究所, 273 (1994)
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[Publications] 斉藤稔(編)戸澤義夫: "芸術とエコロジー(自然とテクノロジー)" 剄草書房(予定), (1995)
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[Publications] 西村清和: "現代アートの哲学" 産業図書(予定), (1995)