1994 Fiscal Year Annual Research Report
棘皮動物の五放射相称の起源と進化に関する古生物学的・分子生物学的研究
Project/Area Number |
05404001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大路 樹生 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (50160487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 聡 静岡大学, 理学部, 助手 (10236812)
遠藤 一佳 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (80251411)
棚部 一成 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20108640)
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Keywords | 棘皮動物 / 進化 / 分子生物学 / 発生 |
Research Abstract |
五放射相称の起源については、先カンブリア紀後期のArkaruaが棘皮動物とすれば、当時既に完全な五放射対称性が出現していたことになる。また、棘皮動物の対称性は三放射が起源で、後に五放射に進化したとの考え方もある。いずれにせよ先カンブリア紀の記録は不完全であり、この三放射起源説は一つの可能性にすぎない。カンブリア紀の棘皮動物では、明らかに五放射のパターンが生じている。このパターンは、左右相称の2-1-2のパターンを示している。このパターンはその後の棘皮動物、例えばEdrioasteroideaに普遍的に見られ、本来五放射相称はこの2-1-2パターンから進化した(Bather,1900;Sprinkle 1973)と考えるのが妥当と思われる。また、その後出現したグループに見られる、正確な五放射相称のパターンは、この歩帯溝が限られた空間でさらに分岐する際、なるべく等密度に分布するという自然選択が働いた結果出現したと推察される。発生学的には、五放射相称は変態時に水管系の形成に伴い発現し、発生学的には五放射相称は水管系が規定すると考えることもできる。また、分子生物学的研究では、ウニのホメオ遺伝子と、ショウジョウバエや脊椎動物のホメオ遺伝子との比較から、ホメオボックス部分の配列の増幅に適するDNAプライマーを作成し、エゾバフンウニ、ムラサキウニ、タコノマクラから抽出したゲノムDNAを鋳型とし、これらの種の持つホメオボックスを、PCR法により増幅することを試みた結果、エゾバフンウニにおいて目的とするDNA断片と同じサイズのDNAが増幅された。増幅されたDNA断片のクローニングおよび、いくつかのクローンのDNA塩基配列の決定により、ホメオボックスの同定作業を現在進めている。今後は、増幅されたDNA断片、あるいはクローン化されたDNA断片をプローブとし、後期発生におけるホメオ遺伝子の発現をin situで調べ、これらの遺伝子の発現と五放射相称性の形成との関係を明らかにしたい。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Landman,N.H.,Cochran,J.K,Rye,D.M.,Tanabe,K.and Arnold,J.M.: "Early life history of Nautilus:evidence from isotopic analyses of aquarium-reared specimens." Paleobiology. 20. 40-51 (1994)
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[Publications] Meyer,D.L.and Oji,T.: "Eocene crinoids from Seymour Island,Antarctic Peninsula." Journal of Paleontology. 67. 250-257 (1993)
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[Publications] Oji,T.and Okamoto,T.: "Armautotomy and armbranching pattern as anti-predatory adaptations in stalked and stakless crinoids" Paleobiology. 20. 27-39 (1994)
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[Publications] 大路 樹生: "「生きている化石」と「その他の生物」の比較" 化石. 57号. 47-49 (1994)
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[Publications] Tanabe,K.,Landman,N.H.,Mapes,R.H.and Faulkner,C.J.: "Analysis of a Carboniferous embryonic ammonoid assemblage implications for ammonoid embryology" Lethaia. 26. 215-224 (1993)
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[Publications] 棚部 一成: "比較発生学的にみたオウムガイ類の原始性" 化石. 56号. 42-46 (1994)