1993 Fiscal Year Annual Research Report
モグラ類の地理的変異の要因分析と種内変異の分子進化学的研究
Project/Area Number |
05454029
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
阿部 永 北海道大学, 農学部, 教授 (80001428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 宗裕 大阪大学, 医学部, 助手 (70177096)
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Keywords | モグラ / 地理的変異 / 分子進化 / mtDNA / アイソザイム |
Research Abstract |
1.平成5年度は当初の予定どおり日本の北半分(本州中部以北)の19箇所において、形態変異およびDNA分析用にコウベモグラ、サドモグラ、アズマモグラなど合計90頭余を採集し、各調査地の土壌硬度測定と、他の土壌特性調査用サンプルを採集した。2.モグラ形態的変異に関しては過去の採集標本とあわせて頭骨の計測値に関する分析を行い、一定の変異傾向があることを確かめ、それと土壌等環境要因との関係を検討中である。3.3種のモグラの類縁関係を知るため、アイソザイムの変異(12種類、20遺伝子座)を調べた結果、各種とも種内変異は非常に少なく、それぞれ遺伝的に均一な集団であることがわかった。種間の遺伝的類縁関係を示すNeiの遺伝的距離Dは、コウベとアズマ間で0.098、コウベとサド間で0.331、アズマとサド間が0.439であり、コウベとアズマがより近緑で、サドが離れているという従来形態研究から知られていた系統関係に一致する結果を得た。また、一部の研究者がサドモグラとしていた新潟県粟島のモグラは本研究者の判定どおりアイソザイムによってもアズマであることが確定された。4.著しい形態の種内変異と分子進化的関係をみるため、採集資料をもとにミトコンドリアDNAのCOI領域の塩基配列を決定する作業を行っているところである。5.本年の調査において付随的であるが非常に重要な分布変動の事実が観察された。コウベは本州において分布を北に向かって拡大中で、その先端の一部は天竜川上流では、少なくとも1959〜89年の30年間は辰野町北部の山峡部南側にあって、この間変化がなかった。しかし、1993年の調査により、諏訪盆地の良好な土壌地帯に侵入し、アズマを駆逐して過去4年以内に10数Kmの分布拡大をしていることがわかった。良好な土壌地帯に侵入すれば急速な分布拡大が起こるという予測どおりの結果が得られた。
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