1993 Fiscal Year Annual Research Report
慢性疲労症候群におけるカルニチン動態と疲労症状との関連について
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05454240
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木谷 照夫 大阪大学, 医学部, 教授 (80028406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田川 進一 大阪大学, 医学部, 助手 (70171569)
倉恒 弘彦 大阪大学, 医学部, 助手 (50195533)
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Keywords | 慢性疲労症候群 / 脂肪酸代謝 / カルニチン / アシルカルニチン / ミトコンドリア |
Research Abstract |
我々は、多くのCFS患者では筋肉の明かな異常がないにもかかわらず、脱力、筋肉痛等の筋症状を伴っていることに着目し、筋におけるエネルギー代謝にとって欠かすことのできないカルニチンの測定を行なったところ、CFS患者では正常人と比較して脂肪酸と結合したアシルカルニチンが血清中において明らかに減少している事を世界で初めて見い出した(Clin Infect Dis,1994)。CFS患者における血清中アシルカルニチンの減少は、フリーカルニチンの濃度は正常であり、従来報告されてきた2次性のカルニチン減少症とは全く異なる病態である。CFS患者におけるアシルカルニチンは、病状が回復するにともなって増加が認められており、アシルカルニチンの減少という特異な現象は、CFSの病因・病態を解明する上で極めて重要な手がかりであると思われる。 このCFS患者におけるアシルカルニチンの減少の成因としては、1)アセチルCoA産生の低下(脂肪酸β酸化の異常や解糖系異常)、2)アシルCoAよりアシルカルニチンへの転移異常、3)ミトコンドリア内膜の通過障害、4)尿中への喪失等が考えられ、そこでまずCFS患者と正常症例について尿中カルニチン排出量について検討をおこなったが、CFS症例ではアシルカルニチンの排出増加は認められなかった。また、CFS例では疲労のため活動性が低下しており、あまり動かないために筋にて作られるアシルカルニチンが低下しているのではないか? という考えもあるため、大腿骨骨折や椎骨骨析のため整形外科病棟に入院し、ベッド上にて安静にして患者についても検討したをおこなったが、CFS患者のようなアシルカルニチン減少は全く見られなかった。現在、CFS症例におけるアシルカルニチン減少の機序の解明とともに、この生理学的意義を明らかにするため、カルニチン及びアシルカルニチンの代謝ならびに生体内動態の検討を行っている。
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Research Products
(15 results)
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[Publications] 木谷照夫: "慢性疲労症候群" Medico. 24. 30-31 (1993)
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[Publications] 倉恒弘彦,木谷照夫: "慢性疲労症候群におけるアシルカルニチンの減少" 臨床のあゆみ. 5. 40 (1993)
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[Publications] 木谷照夫: "慢性疲労症候群の客観的診断にむけての模索 患者の血清アシルカルニチンに着目." Physicians' Journal. 2. 32-34 (1993)
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[Publications] 木谷照夫: "慢性疲労症候群(CFS) CFSの概念" 臨床科学. 29. 663-668 (1993)
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[Publications] 倉恒弘彦 他: "慢性疲労症候群(CFS) CFSの病因・病態、検査." 臨床科学. 29. 682-688 (1993)
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[Publications] 木谷照夫: "慢性疲労症候群とは。" よぼういがく. 23. 3-27 (1993)
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[Publications] 木谷照夫 他: "慢性疲労症候群" 治療. 76. 25-31 (1994)
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[Publications] Kuratsune H,Kitani T et al: "Acylcarnitine deficiency in chronic fatigue syndrome." Clin Infect Dis. 18. S62-S67 (1994)
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[Publications] Kuratsune H,Kitani T et al: "Abnomal cellular carnitine metabolism in chronic fatigue syndrome" EOS journal.
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[Publications] 橋本信也,木谷照夫 他: "CFS:Chronic Fatigue Syndrome 慢性疲労症候群とは何か。" 医学界新聞. 2026. 1-6 (1993)
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[Publications] 木谷照夫: "慢性疲労症候はここまで解明された。" 健康な子ども. 254. 32-34 (1993)
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[Publications] 倉恒弘彦,木谷照夫 他: "Post-viral fatigue syndrome" 臨床と研究. 70. 2459-2465 (1993)
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[Publications] 木谷照夫: "慢性疲労症候群" 日本内科学会雑誌. 82. 267-272 (1993)
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[Publications] 倉恒弘彦,木谷照夫 他: "慢性疲労症候群" 血液・腫瘍科. 27. 371-381 (1993)
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[Publications] 木谷照夫: "慢性疲労症候群(CFS)の問題点と最近の話題" 医療. 10. 72-75 (1994)