1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05454613
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田端 英雄 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (20025373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴坂 三根夫 岡山大学, 資源生物科学研究所, 助手 (60226165)
田中 歩 京都大学, 理学部, 助手 (10197402)
藤田 昇 京都大学, 生態学研究センター, 助手 (50093307)
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Keywords | ミズゴケ / 高層湿原 / 水質 |
Research Abstract |
ミズゴケ湿原の水質とミズゴケ類の消長の関係を調べるために、京都市深泥池浮島高層湿原に生育するハリミズゴケとオオミズゴケの成長実験を水耕培養で行った。半水生でシュレンケに生えるハリミズゴケと陸生でビュルテを形成するオオミズゴケの両種ともに水のpHが6以上になると伸長せず、枯死に至ることが判明した。また、カルシウムイオンは従来言われていたようなpHの中性化と相乗したミズゴケ類への阻害作用はなく、逆に中性のpHの枯死作用を緩和し、0.25mMのカルシウムイオンに他の無機イオンが微量共存すると中性でも正常にミズゴケが伸長することが判明した。この伸長には5μMのリン酸イオンの共存が不可欠であった。水質の富栄養化で増大する無機イオン類のミズゴケ類の成長への効果を調べると、リン酸が20μMの濃度で伸長を阻害し、枯死させることが分かった。深泥池浮島の水質として、pH・電気伝導度とイオンクロマトアナライザを用いて各種イオン濃度を測定した。浮島の周囲の池の水はpHが6以上で、カルシウムイオン濃度は0.25mMに満たなかった。夏季は浮島の大部分がpHが6以下だが、冬季の沈下時は6をこえる部分が広がった。リン酸イオンは生活排水の流入が一部にあるにもかかわらず、夏季はほぼ全域で検出できなかった。しかし、冬季は植物の利用低下に植物体の分解が加わって、部分的に濃度が上昇した。これらの結果から、深泥池浮島でのミズゴケ湿原の退行は冬季の沈下時に中性の池の水が浮島に浸入して主として進行することが分かった。冬季にリン酸イオン濃度が高まる部分では浮島の水のpHが低くてもミズゴケ類は退行する思われる。ミズゴケ湿原を保全するためにはミズゴケの働きで酸性になる緩衝能の小さい貧栄養な水を供給することが大切であり、リン酸を高濃度に含む生活排水は一切流入させてはならない。
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Research Products
(1 results)