1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05620016
|
Research Institution | KYUSYU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
横田 耕一 九州大学, 大学院・比較社会文化研究科, 教授 (80038455)
|
Keywords | 集団的人権 / アファーマティヴ・アクション / 発展権 / 国際人権 / 第三世代の人権 / マイノリティ / 平和的生存権 |
Research Abstract |
1.アファーマティヴ・アクションの検討を進めることによって、その政策の展開において、「集団的人権」概念は不必要であることを確認した。 2.「国際人権」において「集団的人権」の典型事例とされる「発展権」につき前年に引き続き検討を行ったが、国際法のレベルにおいて今なおこの概念が不明確であることを再確認せざるをえなかった。発展途上の民族等について「発展」に関するなんらかの「権利」を認める必要があることは否定できないが、現段階においてはこの「権利」を「人権」として認めることについては、「人権」の本来の概念からして妥当でないこと、「集団的人権」として積極的に把握したときには却って個人の「人権」を侵害する危険性が大であること、この発展の「権利」を「人権」として認めることは必ずしも必要でないこと等が、さしあたり確認された。 3.「マイノリティ」の集団的権利についても、「先住民族」の権利に関して一定の検討を加えたが、現段階では上と同様に、「人権」として認めることについては消極的な判断をせざるをえない。 4.「平和的生存権」を「第三世代の人権」の一つとして「集団的人権」と考える見解が国際法学において提起されているが、日本国憲法9条との関連においても、「個人の人権」として概念構成する方が保護範囲の画定の面でも拡大の面でも有益・有効であるとの結論に達した。 5.差別表現の規制に関しても、「個人の人権」にいま少し執着し、「集団名誉棄損」の日本法への導入については慎重に対処すへきであるとの認識をえた。 6.「集団的人権」問題を含めて、国際法レベルの議論と日本国憲法レベルの議論の交流がいま少し必要であるとの認識をえた。
|